ネガキャンをことごとく覆す
そもそも株価を通じたテスラへの評価は実態に見合ったものなのか。もちろん現状のテスラの業績に見合うものでは到底ない。時価総額が純利益の何倍かを示す指標、PER(株価収益率)は11月3日の終値の時点で393.8。現在の利益を394年分積み重ねてようやく時価総額に達するというわけだ。
PERは将来の成長性や株高が期待される企業の場合は高くなる傾向があるが、それにしても400倍近いというのは異常値と言える。ちなみに世界の自動車業界の中で利益首位のトヨタは9.7、フォルクスワーゲングループは5.2だ。
株はマネーゲームなので、理屈だけでは決まらないが、中身は必要だ。今年10月4日から株価が55%も上がった大きな要因は2つ。10月20日に発表した今年7~9月の3か月決算で15%近い営業利益率を叩きだしたことと、その直後にアメリカのレンタカー大手ハーツがテスラ車を10万台発注したことで、将来の成長期待が一層高まったことだ。
これまでテスラは企業としての持続可能性について常に疑義を持たれてきた。
リーマンショック前はBEV(バッテリー式電気自動車)専業メーカーなど無謀と言われ、2012年に完全自社開発のBEV「モデルS」を発売してからもクルマ自体では採算が取れず、CO2排出権の販売でしか利益を出せないと言われた。それより価格帯の安い「モデル3」を発売したときは品質が悪いと言われ、今年中国でテスラに対するネガティブキャンペーンが張られた時は中国ビジネスが行き詰まると言われた。
今までのところ、それらの予測はほぼすべて外れた。とくに前述の今年7~9月の3か月決算で注目すべきは、CO2排出権の売り上げが激減したのをカバーしてあり余る水準の利益をクルマの販売で上げたこと。BEVでもビジネスのサスティナビリティを確保できるということを経営スコアで証明してみせたことは、キャピタルゲインで一財産築こうという投資家の目にはこのうえなくポジティブに映ったに違いない。
今日、古典的自動車メーカーがこぞってBEVへの巨額投資を開始してテスラ包囲網を築こうとしており、中国メーカーはテスラとまったくレイヤーが異なる格安BEVで攻勢をかけているが、BEVのビジネスリーダーは当面テスラだという確信をテスラは取り付けつつある。