その論文は、2021年8月30日にmedRxiv(メドアーカイブ。査読前の医学論文を公開するプレプリントサービス)に掲載された(英文タイトルはSARS-CoV-2 mRNA Vaccination-Associated Myocarditis in Children Ages 12-17:A Stratified National Database Analysis)。
同論文によると、アメリカの12〜17歳の子どもでワクチン2回接種後に心筋炎が起きるリスクと、コロナに罹患して120日以上入院するリスク(8月21日時点)とを比較したところ、基礎疾患のない12〜15歳の男子では心筋炎のリスクは入院リスクの3.7〜6.1倍、同16〜17歳の男子では2.1〜3.5倍だった。
「査読前の論文ですが、非常に大規模なデータに基づく信頼ある研究者のグループによる解析です。ワクチン接種による心筋炎は早期に治療すればほとんどが軽症に終わり回復するという指摘はありますが、この論文から言えるのは、子どもの入院リスクはそもそも極めて低く、ワクチンを打つ医学的な必要性はほとんどないということです」(村中氏)
しかし、村中氏は「だからといって、打つ意味がないとは言えない」という。
「ワクチン諮問委員会が12歳から15歳の健康な子どもへの接種は推奨しないとしたにも関わらず、イギリスの多くの州では学校生活の継続などの“社会的なベネフィット(恩恵)”を考慮した子どもたちへの集団接種が始まっています。背景にあるのは、一部の大人がワクチンを接種拒否している問題です。大人が全員接種すれば流行は収束し、医療が逼迫することもなくなるのに、現実はそうではない。だから、子どもたちにも接種して集団免疫効果を促す。そのことは、周りまわって子どもたちにとってもベネフィット(恩恵)になるだろうという考え方です」(村中氏)