芸能

『スナック キズツキ』の原田知世にはあのCMと共通するぬくもりがある

スナックのママ役を演じる女優・原田知世 ©「スナック キズツキ」製作委員会

女優・原田知世の魅力が全開 (c)「スナック キズツキ」製作委員会)

 キャスティングの妙を実感させる作品に出逢った時の悦びはまた格別だ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が考察した。

 * * *
  11月9日に永眠した作家・僧侶の瀬戸内寂聴さん。享年99、人生を謳歌したアッパレな大往生。過去のラジオ番組では爆笑問題が寂聴さんにこんな質問を投げかけました。

「いろいろと悩み相談を受けても、これはちょっとさすがにどう答えたらいいかわからないってときもあるでしょ?」

 さて、寂聴さんはこの質問にどう答えたか?

「答を求めてるんじゃないの彼らは。(話を)聞いてほしいの」

「もし身の上相談を受けたら、一生懸命聞いてあげればいいのです。答はいりません。ただ聞いてあげればいいのです」という名言も残しました。ポイントは「回答する」ことではなくて、「真剣に聞くこと」にありそうです。

「そうでないと相談がいつまでも終わらないから。きちんと聞けば、30分で帰っちゃうんだから」と茶目っ気のある口調で笑わせる寂聴さんの姿もTVの追悼シーンで流れました。

 瀬戸内寂聴という人の自由奔放な生き方には激しいバッシングもあった。一方で、特に晩年の法話には熱狂的なファンがおしかけ、人生相談乗って欲しいという人がひきもきらなかった。その理由はひとえに、寂聴さんの「受け止める力」だったのではないでしょうか。

 そう、みんな自分の悩みを聞いてほしい。わりきれない思いを受け止めてほしい。これほど誰かに「聞いてほしい」と多くの人が思っている時代は他に無いのでは?という時代にピタリと適合するドラマがあります。

『スナック キズツキ』(テレビ東京系金曜夜00:12)は都会の路地裏でひっそり営むスナックが舞台。ママのトウコを原田知世さんが演じています。そこはちょっと風変わりなスナックで、アルコールは出さない。ふらりと入ってくるのは傷ついた人々。

 ある夜はコールセンターで働く中田優美(成海璃子)が、顧客のクレーム対応でストレスを抱え夜道に光る看板に誘われ入ってくる。

 ある時はコンビ二でバイトする富田希美(徳永えり)が、自分は誰にも見つけてもらえない、誰かの役に立つわけでもない人生について、一抹の寂しさを抱えて入ってくる。

 ある夜は主婦・中島香保(西田尚美)。タワマンで豊かな暮らしをし一人息子はエリート国立大学に合格したのに、どこかわりきれない。満たされない……。

 原田知世の演じるトウコママの口調はちょっと変わっていて、初対面であろうが誰に対しても友達言葉。「今日もおつかれさん」「ごくろうさん」「そうだね」「うん」とフラット。

 前から知っている人みたいに何げなく語りかける。相手はふっと肩の力を抜いて口にできなかったことを囁くように口にする。

 トウコは美味しい飲み物を出す。あとは客にアドバイスらしいアドバイスもしないし具体的な回答も出さない。ただ静かに客の思いを「受け止める」。どこまでも自分流に。しかし、いい加減ではなく。傷付いた人たちは、トウコと話したり、詩を朗読したり、歌ったり、しりとりをしたり、思い出のディスコダンスをしたり。

 トウコと「一緒にやる」というのがポイントです。どんな意味があるとか効能があるのかは説かず、ただ一緒に「やる」。それが受け止める作業なのでしょう。

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト