『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)の著者であるドラマ評論家の成馬零一氏は、有村架純が「今年の顔」に選ばれたポイントは「どこにでもいるふつうの真面目に生きている女性を、リアルに演じられるところ」だと指摘し、2021年を通じた成長についてこう説明する。
「基本的には今まで積み上げてきたイメージを踏まえた上でステップアップしているのですが、より年相応の20代後半の女性をリアルに演じられるようになったと思います。
単純な清純派でなく、恋愛も仕事も体験している20代後半の女性、純粋さもズルさも強さも弱さも兼ね備えたどこにでもいる女性を演じられることが、彼女の最大の強みです。
含みのある表情を用いて複雑な感情を表現できるのに、作品世界にうまく溶け込んで演技が悪目立ちしないのも魅力だと思います」
11月3日に都内で行われた「2021年ヒット商品ベスト30」発表会で、「今年の顔」に選出されたことについて有村架純は「作品に携わる時には誠実に1つ1つ大切に、つむいでいきたいという思いでやっていた」「自分だけの力ではなく、作品を見てくださった方々の心に残ってくれた作品たちが、今年は運良くあったのかなと思います」とも語っていた。
20日スタートのドラマ『前科者』は、2022年1月に続編が映画版として公開される予定だ。犯罪歴を持つ人々の社会復帰と向き合う“保護司”を演じる社会派ヒューマンドラマで、どんな風に作品世界に溶け込んでいくのか。彼女の誠実でリアリティ溢れる演技に、多くの観客が期待を寄せているに違いない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)