スポーツ

江夏豊、伝説のホームラン秘話「いまだに王さんに打たれたシーンが浮かぶ」

「宿命のライバル対決」を、江夏本人が振り返る

「宿命のライバル対決」を、江夏氏本人が振り返る

 昭和の大投手・江夏豊は、今でも昭和46(1971)年に王貞治から打たれた逆転ホームランが忘れられないという。あれから半世紀。「宿命のライバル対決」を、江夏本人が振り返った。【前後編の前編】

 * * *

ラジオをぶっ潰した

 常に熱気を感じていたよ。真剣勝負を戦う男のね。

 昭和42(1967)年に入団して18年間現役生活を続けたけど、時代時代にいろんな好打者がたくさんいた。あらためて自分の現役生活を振り返ってみて、最高、最強の強打者って聞かれれば、やっぱり、王(貞治)さん。全盛期に勝負ができたっていうのは、ほんとにピッチャー冥利に尽きると思う。

 王さんとは年齢で8つも違うんだけど、自分が王さんとライバル関係に入り込んだのは、やっぱり長嶋(茂雄)―村山(実)の対決があったから。自分もあんな対決をしたいと思わせてくれたライバルは、王さんしかいなかったね。

 まだ868本の世界の王じゃなくて、「日本の王」、「巨人の王」という時代やったからね。そういうときに、村山さんから「おれのライバルは長嶋だから、豊、おまえは王だ」と言ってもらえたことも糧になった。

 王さんとの初対決は三球三振だった。正直、何で打てないんだろうって思ったよ。

 急遽、巨人戦で先発の村山さんがトラブルで3回から登板し、ミスターとの初打席は凡打。だけど、次の打席で打たれて、ミスターがセカンドベースに滑り込んだとき、ピッチャーのほうも見ずに知らん顔で、ユニフォームをはたいてるわけ。それをマウンド上から見て「かっこいいな、これが長嶋茂雄か」と。

 そう思ったら駄目よ。そこから長嶋ファンになってしまった。ミスターと勝負して抑えても嬉しくないし、打たれても腹が立たない。これがミスターの特徴かもしれないけど、そういう方やったよ。

 王さんは、目ん玉をむき出して向かってきて振っても振っても当たらない。打たれたミスターが凄いバッターで、打てなかった王さんがそうでもないってことではない。凄いバッターっていうのは、空振りの三振に打ち取ってもスイングの凄さが伝わってくる。案の定、王さんには次の試合で打たれた。

 昭和40年代のはじめのころの野球ファンの気質も、今とはまったく違う。昔の長嶋ファンは、極端な話、巨人が負けたって長嶋さえ打てばいいんだから。おれの人生は長嶋茂雄なんだっていうファンの方がたくさんいたわけ。

 それくらい、寝食を忘れるくらい熱中してくれていた。今、そんなことを言うファンの人っていないでしょ。

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン