もちろん、老後資金2000万円不足問題などに象徴されるように、高齢者の“資産寿命”をめぐる問題は深刻なものとして考えなくてはならない。ただ、新型コロナによって様々な人の生活が打撃を受けたなかで、「残業代やボーナスが減った現役世代に比べて、リタイア後の世代は年金が減額されたわけではないので影響は比較的軽微と考えられる。貯蓄額についても、現役世代よりもリタイア後世代のほうが多いのは、各種統計でも明らか。年齢を重ねた人のほうが“貯蓄があり、収入も減っていない”という傾向はあるはずだ」(同前)との指摘もある。自治体の福祉行政関係者もこう話す。
「もともと、住民税非課税世帯であれば、年金から天引きされる健康保険料や介護保険料などの負担も少なくて済むし、医療費が抑えられる『高額療養費制度』の自己負担上限額も低くなる。自治体によってはインフルエンザ予防接種が無料になるなどの各種の負担軽減策がある。
現役世代で失業したり、ワーキングプアで収入が少なかったりする住民税非課税の人たちに10万円を給付するという話はわかるが、十分な貯蓄のある年金世代の人まで一緒に10万円を受け取れるのは、多くの人から納得の得られる施策と言えるのだろうか。東京都などの大都市の場合、単身者で年収が100万円より多ければ住民税非課税にならない。働く貧困世帯に、本当に支援の手は届くのでしょうか」
困窮する世帯への支援が必要なのは当然だが、どのような線引きが適切なのか、さらなる議論が巻き起こりそうだ。