国内

張本勲氏「カーリング女子は掃除上手そう」発言が炎上しなかった理由

炎上発言が実際炎上するかどうかはどこで変わるか(写真は張本勲氏。時事通信フォト)

炎上発言が実際炎上するかどうか、その線引きは(写真は張本勲氏。時事通信フォト)

 インターネットが普及した2000年代以降、加速度的に増えていく炎上騒動だが、実は発生の仕方において大きな変化があったという。ネットニュース編集者として長年、炎上案件をウォッチし続け、『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』を上梓した中川淳一郎氏が指摘する。

 * * *
 ネットでの情報発信は、一部の人々にとっては莫大な利益をもたらしてくれる。しかし、当然炎上というリスクもあるわけで書き込む内容、動画での発信には注意をしなくてはならない。炎上をした場合、一般人も著名人もその一発で人生が没落することもあり得る。

 2013年に猛威を振るった「バカッター騒動」などはその最たるものである。「バカ」と「ツイッター」を合わせた造語で、愚行をいちいちネットに公開し、炎上し、クレームが殺到する一連の流れのことを指す。

 記念すべき第一弾とされるのは、高知県内のコンビニのアイスクリームのケースに入った男子高校生が炎上し、父親が経営する同店は某コンビニチェーンからフランチャイズ契約を解除された件。東京都内のソバ屋では、バイトの男性が食洗器に入る様子をツイッターに公開し、「不衛生だ!」と炎上。結局同店は廃業となり、経営者はこの男性とその親を訴えた。他にも親の所属先である企業や本人の学校が突き止められ、電凸(電話突撃)が相次ぎ業務妨害のような状態になる例が続出した。

 炎上については、社会正義的に批判する面に加えて、愚行や失言を徹底的に叩くことによる正義感の発露といった面もある。あとは、「人の不幸は蜜の味」で、とにかく常時誰かを炎上させたくなるメンタリティが今の日本のネット空間には存在する。

 炎上させたい人は一斉にスクラムを組んでターゲットを狙い撃ちする。そして、その対象が燃え尽きるまで攻撃を続け、すぐに次のターゲットを定めて攻撃をする。ネットがなかった時代には発生しなかったこの現象だが、とにかく誰かの失言や愚行を日々待ち続け、叩くチャンスを一般人もメディアも虎視眈々と狙い、それで収益を上げたり留飲を下げたりする状態になっている。

 野球解説者の張本勲氏は、レギュラー出演する『サンデーモーニング』(TBS系)で、東京五輪女子ボクシングフェザー級の金メダリスト・入江聖奈に対し「女性でも殴り合いが好きな人がいるんだ。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って、こんな競技が好きな人がいるんだ」と発言。

 これが大炎上した。東京五輪組織委員会会長だった森喜朗氏が「女性は話が長い」と発言して炎上し、辞任に追い込まれたのと同じように「男の老害が女性差別をしている」といった文脈で捉えられた。張本氏は「今回は言い方を間違えて反省してます。以後、気をつけます」と翌週に謝罪した。以後、張本氏は番組中での昭和男性的発言を封印気味だ。

 同氏の発言はどう考えても頓珍漢ではあるものの、『サンデーモーニング』を毎週見ている人からすれば「はいはい、ハリー(張本氏のこと)がまたバカなこと言ってるね(笑)」的な扱いだったことだろう。とにかく同氏はこのような発言をこの20年ほど続けているのである。

関連記事

トピックス

硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
隆盛する女性用ファンタジーマッサージの配信番組が企画されていたという(左はイメージ、右は東京秘密基地HPより)
グローバル動画配信サービスが「女性用ファンタジーマッサージ店」と進めていた「男性セラピストのオーディション番組」、出演した20代女性が語った“撮影現場”「有名女性タレントがマッサージを受け、男性の施術を評価して…」
NEWSポストセブン
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)では関東特集が放送される(番組公式HPより)
《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由
NEWSポストセブン
海外SNSで大流行している“ニッキー・チャレンジ”(Instagramより)
【ピンヒールで危険な姿勢に…】海外SNSで大流行“ニッキー・チャレンジ”、生後2週間の赤ちゃんを巻き込んだインフルエンサーの動画に非難殺到
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン