写真を撮るとき掲げるのは、今やスマートフォンだらけ。2019年5月1日、令和元年を迎える渋谷スクランブル交差点を撮影する人たち(Avalon/時事通信フォト)

写真を撮るとき掲げるのは、今やスマートフォンだらけ。2019年5月1日、令和元年を迎える渋谷スクランブル交差点を撮影する人たち(Avalon/時事通信フォト)

 金がかかるのが癪なのか、それとも公衆の面前で恥をかきたくない、そんな心理が働いているのかは定かではないものの、行き場を失った「スマホ持ってるだけ難民」の高齢者たち。実際は、その難民には中高年も少なくないのだが、彼らはあらゆる場所で、スマホの使い方について「尋ねまくって」いる。

「60代の上司が最近やっとスマホに買い替えたというんですが、パソコンと違って操作方法が全くわからないと、一日中部下に聞いてまわっている。部下はいちいち仕事を止めて説明せねばならず、そんな上司がもう二人ほどいるもんですから、大変です」

 都内の中堅食品会社勤務・福田明子さん(仮名・40代)の会社では、トップの会長(70代)を始め、高齢の役員クラスが最近になって、ガラケーからスマホに買い替えた。そろって「パソコンをやっと覚えたばかりなのに」と愚痴りながら、部下にスマホの使い方を聞くのだが、苛立っているからか、質問する側なのにだんだん詰問口調になるという。

「バスの中や駅でも、高齢者が使い慣れないスマホを片手に、運転手や駅員にスマホで乗り換え案内をして欲しいとか、千円差し出して『スマホに入れて(入金して)』と迫っているのをみたことがあります。部下の我々もイライラしちゃって、良くないなとは思っているんですけどね。上司だから質問を受け付けるのを断れないし、仕事の効率がだいぶ落ちました」(福田さん)

 一方、スマホを販売する側にも責任があるかもしれないと打ち明けるのは、前出の携帯販売店従業員・柏木さんだ。

「はっきりいって、(スマホを)売ってしまえばそこまで、というのが最近の販売店の姿勢です。アフターサービスも全部ネットですし、若い方だと、そもそも販売店に来られず全部ネットで完結される。でもご高齢の方は対応できない。対人で教えてもらおうと訊ねると、我々が教えるのは有料です、となれば反発したくなる気持ちもわかる」

 筆者も以前、ある携帯電話販売店で、販売員がどう考えてもオーバースペックであろう機種を、高齢老人に進めている様子を目撃したことがある。老人は黙って、言われるがまま書類にサインをしていた。押し売りのようだと非難され、以前よりは露骨な販売方法はなくなったと言われるが、そういった悪しき業界風習の名残もあるのかもしれない。

 必要のない機能がついた複雑なスマホをあれこれ売りつけるより、シンプルな機種をシンプルなプランで高齢者にも利用しやすい形で販売する。そんな流れが広まらないと、ユーザーも現場も、混乱が続くだけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン