芸能

賛否分かれる『イカゲーム』、「平等の哲学」を描ければ傑作になる

主人公を演じたイ・ジョンジェ、モデル出身のチョン・ホヨン、主人公の幼なじみ役のパク・ヘス(AFP=時事)

主人公を演じたイ・ジョンジェ、モデル出身のチョン・ホヨン、主人公の幼なじみ役のパク・ヘス(AFP=時事)

 9月に世界同時配信されるや爆発的人気となり、これまで世界94か国で1億4000万世帯が視聴したとされる韓国ドラマ『イカゲーム』(Netflix)。先行作品との類似ポイントが数々指摘されながら、なぜこれほどまでにヒットしたのか。映像業界に造詣の深い小説家の榎本憲男氏が、賛否両論渦巻く『イカゲーム』の核心をわかりやすく解説する。(以下は作品のストーリーに関する記述が含まれます。未見の方はご注意ください)

 * * *
 Netflixで配信されている韓国ドラマ『イカゲーム』は、目を引くような大スターがメインキャストに配役されていないにもかかわらず、世界的に大ヒットしている。この作品の特異性について書いてみたい。

 まず、ここまでの規模のヒットは、エンターテインメント性がないと達成できない。大ヒットは多くの人が純粋にこの作品を楽しんだことを意味する。なので、本作品を評価する者は、まずこの作品のエンターテイメント性を讃える。「面白い!」と。

 ただ、このような賞賛の影に、本作品が日本のある種のコンテンツに似ていることを指摘し、その勢いで「独創性に欠け、たいしたことがない」と評価する人がいる。では、『イカゲーム』は日本のコンテンツを模倣しているのだろうか? 「している」と僕は思う。しかし、そのことが本作品の評価を損なうことになるのかというと、「ならない」というのが僕の鑑定である。

 日本のコンテンツのどの作品にどこが似ているのかを示すよりも、『イカゲーム』の物語設定をまず説明しよう。『イカゲーム』では、登場人物はほとんど全員“食い詰め者”である。彼ならびに彼女らは離島に集められ、大金の獲得を目指して、子供っぽいゲームを戦う。勝ち進めばどんどん大金獲得に近づくが、負ければその時点でゲームオーバーとなり、射殺される。このハッタリの効いた設定が、日本の一部のコンテンツと似ているというわけである。

 このようなハードエッジな状況設定をし、それを原動力にストーリーを力強く押し進めていく作品をハリウッドでは「ハイコンセプト」と呼ぶ。そして、この「ハイコンセプト」という言葉はハリウッドのスタジオのエスタブリッシュメントが使うのと、辛口の評論家筋が使う場合は、若干ニュアンスが異なる。

  

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン