『真犯人フラグ』は年またぎに注目
考察重視で謎解きの好きな視聴者層がメインの『真犯人フラグ』と、ストーリー重視で視聴者層の幅広い『最愛』。
前者は伏線を探すために細部までチェックし、熱のこもった考察をする分、作品に対する評価のハードルが上がります。実際、考察を楽しむ声だけでなく、「『あな番』のような結末は避けてほしい」「『続きはHulu』だけはやめて」など不安の声も少なくありません。
一方、後者は伏線などをさほど気にせず、登場人物への共感や応援の声が目立ち、やはり考察ではなく「幸せになってほしい」「この人が犯人だけはやめて」など思い入れたっぷりのコメントが見られます。
ここまではプロデュースやコンセプトの違いが、視聴者層と見方の違いにつながっていますが、特に『真犯人フラグ』はこのまま最後まで進むとは思えません。そもそも『最愛』は今月で最終話を迎えますが、『真犯人フラグ』は年をまたぐ2クール放送。
『あなたの番です』は折り返し地点で「主人公の1人である手塚菜奈(原田知世)が殺される」という、まさかの展開から視聴者の感情移入をうながしたように、『真犯人フラグ』も12月末に急展開があって、ストーリー重視の見方が増えるかもしれないのです。
もともと長編ミステリーは、「途中からの視聴がほとんど期待できない」という点で難易度が高く、めったに放送されない貴重なジャンル。異なる魅力を持つどちらの作品も、最後までミステリーと人間ドラマの両方を存分に楽しんでおきたいところです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。