芸能

神尾楓珠『顔だけ先生』は国宝級イケメンによる複雑な味わいのある秀作

神尾楓珠

神尾楓珠は東京出身の22歳

 役者の魅力は作品の質によっていくらでも変化しうるものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 2021年の秋ドラマもいよいよクライマックスへ。前評判に比べて今ひとつインパクトに乏しかった作品もあれば、ドラマの雰囲気は超真面目なのにツっコミどころ満載で視聴率は絶好調、予想外にウケてしまった作品も。例えば12日に最終回を迎える『日本沈没―希望のひと―』(日曜21時 TBS系)。ネットには視聴者からのツっコミが目立ち、「嘘っぽい」「陳腐」「なぜ今、日本沈没のドラマ化なのか意図が解りかねる」などと根本的なことまで愚痴りながらも、最終話まで見続ける視聴者がたくさんいて興味深い。

 その反対に、世の中的には話題作とは言えないけれど、個人的には最高点を差し上げたいドラマもあります。既成概念をぶっ壊す力が絶大で、クスッと笑えて爽快で、しみじみ心に沁みる。ドラマっていいなあ、若さとは可能性そのものなのだ、と素直に納得できるオリジナル学園ドラマが『顔だけ先生』(土曜23時40分 東海テレビ・フジ系)です。一言で説明すれば「破天荒な教師が問題を解決していく」定番の学園モノ。しかしこれが一筋縄ではいかない、複雑な味わいのある秀作に仕上がっています。

 タイトルの『顔だけ先生』とは、自分至上主義で非常識ながらルックスだけは抜群、教師らしいことは一切しない先生のこと。その遠藤先生を演じているのが「目ヂカラ世界遺産」、「国宝級イケメン」(「ViVi国宝級NEXTイケメランキング」2019)と評される神尾楓珠さんというのがまず面白い。

 最初から国宝級のイケメンを「顔だけ」と言い放ち、ふっきれている。イケメン=モテる、チヤホヤされる、恋愛話……といった連想を断ち、顔以外には全く評価を受けない存在が教師になる、というパラドックスを展開していきます。遠藤先生は超マイペースで数々の非常識きわまりない行動をやらかしていくけれど、実は本質的なところを突いていて、それが高校生の心に届き生きる力になっていく、という物語の構造です。

 さて、神尾さんのルックスですが、たしかに見れば見るほど整っていて国宝級のイケメンぶりを実感させられますが、遠藤先生のキャラクターは破壊的です。「これって普通だと思いますよ」とか言いながら、常識を軽々と超えていく風変わりな人の魅力を引き立たせているのが、神尾さんの徹底した役作りです。

 神尾さんは遠藤先生について「セリフの中で核心をつくことがあるが、さらっと言っているように意識している。深いことを言っている、それを出さないのが遠藤という人」とコメント。飄々と常に爽やかな笑みを見せながら自由で勝手な振る舞いを連発し、どこまでも振り切れた人物を気持ちよく表現できているあたり、役者としての力を感じます。

 教師そのものが「常識」という枠組みを淡々と越えていくから、このドラマは説教臭くないしお涙頂戴的でもない。同僚の教師・亀高先生を演じる貫地谷しほり、教頭役・八嶋智人ら周囲を固めるキャストたちも非常にノリが良くパロディとギャグの応酬で笑わされる。しかし扱うテーマは決して軽くなく、ひきこもり、モンスターペアレント、ゲイの告白、外見差別…と社会問題から逃げない。一見すると学園コメディ、実は映像も演出もクリエィティブ、ふと気付けば泣かされる深みがあります。

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト