師匠のいろんな言葉を聞いて、間近で学んで、価値観を共有したからこそ、今も私の中に談志がいる。テレビの視聴者には、もはや談志を知らない世代もいるでしょう。そうした世代に談志の凄さを語り継ぐことが、自分の役目だと感じています。
亡くなって10年経って思うのは、芸は真似できても生き様までは真似できないということです。あんなに悶え苦しみながら生きるのは、常人ではありません。生前、談志は「お前は俺に似ているからいつか狂うだろう」と言っていましたが、私はテレビというオモチャを見つけて、小さな子供の前ではマイホームパパでいることで、その苦しみから逃れられた。
よくテレビで炎上するから「さすが談志の弟子だ」って言われますけど、炎上のレベルが違う(笑)。私はまっとうなことを言って炎上するだけだけど、談志は非常識なことを言って炎上する。なにせ人殺しまで正当化するんですから。あんなふうに思っていることをずけずけ言って、街を歩いている時もそこらの人まで怒鳴りつけるなんてできっこない。一時は真似ようと思いましたが、無理だと分かったら気が楽になりました。生き様まで真似する必要はない。ただ、談志の芸だけは引き継いでいきたいと思います。
【プロフィール】
立川志らく(たてかわ・しらく)/1963年、東京生まれ。1985年に立川談志に入門。1995年、真打昇進。『全身落語家読本』『雨ン中の、らくだ』など著書多数。『ひるおび!』ほかテレビ出演多数。12月25日に、高田文夫氏が企画する「第四回オール日芸寄席~おっと天下の日大事~」(有楽町・よみうりホール)に出演予定。
※週刊ポスト2022年1月1・7日号