裾野のサッカー人口、登録者数が減れば公益財団法人としての事業が成り立たなくなる。2014年度は21億円の黒字だったが近年は赤字体質、2021年度は28億円の赤字を見込んでいる。さすがにコロナ禍が追い打ちをかけた結果だが、赤字の解消見込みは立っていない。象徴でもある文京区の日本サッカー協会ビル(以下、JFAハウス)を売る可能性もある。
「それは仕方ないと思います。サッカー第一、選手第一を考えているJFAですから、貧乏にもなれているでしょう」
子どもがサッカーを支えてくれることが一番
コーチの言う通り、資金潤沢だった日本野球機構(NPB、こちらも現在は厳しい)と違い、かつてのJFAは貧乏所帯だった。日本リーグ時代は他のアマチュアスポーツ団体と同様に岸記念体育会館に間借りして細々と運営していた。やがてJリーグが盛り上がり、日本がワールドカップに出場するようになると組織を拡大、1997年に本格的なトレーニングセンターとしてのJヴィレッジ、2003年には2002日韓ワールドカップの収益で悲願の本部、JFAハウスを手にすることができた。さまざま批判はあれどこの急成長、本当にすごいことである。何よりサッカーが残ることが大切、JFAは、資産的にはまだ潤沢で十分に耐えられる、だからこその赤字、それに対応する将来のための削減なのだろう。
「それでも少子化と多様化にサッカーも対応しなければいけません。うちも子ども集めが大変ですが、集まらないなりにサッカーを続ける努力が大事です」
子どもが集まらない理由は他にもある。昔に比べればマシになったが、かつての体育会系は理不尽なシゴキとイジりにまみれていた。
「そのイメージがあるので敬遠する親子もいます。そりゃ勉強したほうがいいでしょうし」
拙筆『中田翔移籍問題で考察 スポーツ界のいじり根絶は指導者の責務だ』でも言及したが、野球サッカー問わず、こうした体育会系を敬遠する子どもはもちろん、かつて自分もされたがために敬遠する親もいる。お金も時間も使うなら、塾に行ったほうがいいと思うのも無理もない。
「いまはそこまでではありませんし優しく楽しくがモットーですけどね、それでも子ども集めが難しいのは事実です。大人だって減ってるわけで」
子どもたちだけではなく、JFAの全登録選手数は2014年の96万4,328人をピークに2019年は87万8,072人、コロナ禍の2020年は81万8,414人に減ってしまった。
「シニアは結構がんばってるんですけどね、Jリーグのサポーターも含め高齢化してると言われればそれまでですが、それでも裾野は広いほうがいい」