この悔しさを上の舞台で晴らして

 そして、191センチと長身の佐々木に対し、2019年の侍戦士の中でも、最も小柄な選手が沖縄・興南高校の宮城だった。高校最後の夏、宮城は沖縄大会決勝で延長13回を投げ抜いたが、最後は押し出しの四球を与えて敗戦。この日に投げた球数は229球にのぼった。

 韓国の地では、登板もままならない佐々木らに代わってフル回転し、打つほうでも8打数3安打と活躍した。試合中は息子のプレーを見守る父・享さんの姿もあった。8人兄弟の父である享さんは興南高校の寮監を務めて息子をサポートした。

「息子はひとり、興南の敗戦の責任を背負っていたし、背負わされてもいた。それが私には我慢ならなかった。この悔しさは上の舞台で晴らしてほしい」

 佐々木と奥川に、西純矢、及川雅貴(共に阪神)を加えた4人は、この年の「高校四天王」と呼ばれていた。彼らと比べれば171センチと小柄な宮城は、注目度でも劣っていた。オリックスからの指名も、1位とはいえ「外れ外れ1位」。高校時代に心に秘めた反骨の心が、プロ入り2年目で13勝を挙げるという快進撃を支えてきた。

 当時、星稜(石川)のエースだった奥川もまた、悔しい夏を過ごした。選抜では相手校のサイン盗み疑惑が勃発し、敗戦後に林和成監督は相手のロッカールームに直行し、猛抗議。大会後、監督は学校から2か月の指導禁止処分が下り、奥川と星稜にとってはゴタゴタの末にたどり着いた最後の甲子園だった。

 聖地では5試合に登板し、決勝を含めた投球数は計512球を数えた。圧巻だったのは、3回戦の智弁和歌山戦。タイブレークにもつれた14回までに23三振を奪い、勝利後は安堵の気持ちからか大粒の涙を落とした。しかし、決勝では一球に泣いた。履正社の井上広大(現阪神)にバックスクリーンに運ばれ、北陸勢として史上初の深紅の優勝旗には手が届かなかった。
 
 その2週間後、奥川は見事な世界デビューを果たす。W杯ではスーパーラウンドのカナダ戦に先発し、7回を103球で投げきり、18個もの三振を奪った。

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