スポーツ

箱根駅伝“超高速化”で改めてわかる昭和のレジェンドの凄まじさ

レジェンドたちの走りとは(写真は瀬古利彦氏/時事通信フォト)

レジェンドたちの走りとは(写真は瀬古利彦氏/時事通信フォト)

 年明け1月2~3日に開催される箱根駅伝。近年はナイキの厚底シューズの登場などによって“超高速化”が進んでいる。以前は1万メートルの記録が27~28分台であることが「一流学生ランナーの証」と言われていたが、もはやそうした記録を持つ選手は珍しくなくなった。そんななかで、過去の記録を振り返ると、改めて“レジェンド”の凄さが際立って見えてくる。

 今回、箱根駅伝に出場するのは21チームで、登録選手は各校16人で総勢336人。そのなかで27~28分台の自己ベストを持つ選手は153人もいる。優勝候補の一角である青山学院大では登録16人全員が28分台をマークしている状況だ。

「タイムの向上に寄与していると考えられるのが、ナイキの“厚底”に代表されるシューズの進化と普及でしょう。記録アップの傾向は箱根駅伝本番でも顕著で、2020年の第96回大会では、往路4区間、復路3区間で区間新記録が生まれました。年明けの大会も、過去に例のないハイレベルな記録での争いとなるのではないか」(スポーツ紙デスク)

 かつてない高い水準での競走が期待できそうだが、「世界との比較」という意味では、その差はむしろ開いているのかもしれない。世界の男子1万メートルは26分台の争いに突入している。昨年10月にはジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)が26分11秒00の世界新記録を樹立。記録とともに駆け引きが重要となる世界陸上の優勝タイムを見ても、ロンドン大会(2017年)でモハメド・ファラー(イギリス)が26分49秒51で金メダルを獲得している。

 日本選手の記録に目を転じると、東洋大のエースとして2020年の箱根で2区区間新を叩き出した相澤晃(現・旭化成)が、大学卒業後の同年12月に出した27分18秒75が日本記録となっている。今年12月には駒澤大の絶対的エース・田澤廉が歴代2位となる27分23秒44をマークしたが、未だに26分台を記録した選手はおらず、世界記録とは1分以上の差がある。相澤は今年の東京五輪男子1万メートルで17位に終わった。

 そうした状況を見渡すと、改めてその凄さがわかるのが、30年以上前に1万メートルで27分台の記録を出していた学生ランナーの存在だ。陸上長距離界のレジェンドで、日本陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーを務める瀬古利彦氏である。

 早稲田大学時代は箱根駅伝で4年連続“花の2区”を走り、3、4年次に区間記録を更新しているが、トラックでも世界レベルの走りを見せていた。早稲田大3年だった1978年には27分51秒61の日本新記録を打ち立てている。1983年の第1回世界陸上ヘルシンキ大会の優勝タイムが28分01秒04、1987年の第2回ローマ大会で27分38秒63だから、そのレベルの高さがよくわかる。

 瀬古氏の持つ1万メートルの学生記録はその後、早稲田大の後輩にあたる渡辺康幸氏が1995年に更新するまで、17年にわたって破られることはなかった。渡辺氏もまた、山梨学院大のステファン・マヤカと何度も名勝負を演じ、箱根路を彩った選手だったが、学生時代からトラックで世界を舞台に戦っていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン