この「電話をかける側」、そして電話をかけるための「名簿作成」のいずれもの経験があるという都内のコンサル会社代表・島津英二さん(仮名・40代)が、業者側の実情を明かす。
「昔は、電話帳を片手に片っ端から電話をかけていましたが、名簿屋が証券口座開設者とか高額所得者など富裕層の名簿を準備してくれるようになってからは、耳が擦り切れるほど、名簿の番号にかけていました。そうやって、ある程度客の素性を絞り込む業者もいれば、いまだに大企業を片っ端から、金持ち職員が多そうな医療機関を隅から隅まで、という業者もある。特にマンション営業なんて、1000件かけてアポを取り付けるのが数件あれば上出来な世界なので、電話がけする件数は多くなります。それに、営業マンにもバック(※売上に応じた見返り報酬)があるから、必死なんだよ」(島津さん)
電話営業が芳しくなければ、現場の営業社員は駅前広場や公園を歩き、アンケートなどと称して巧妙な営業活動を行うこともザラにあるという。さらに、電話営業の世界は大きな変化を迎えつつある。
「固定電話を持つ家庭が少なくなり(電話営業の)業界もだいぶ変わりつつある。これからは個人の携帯電話番号の情報がさらに活用されるようになる。個人情報保護法の改正などがあり逆風は吹いているが、抜け道を必ず考えるはず」(島津さん)
あくまでも「営業活動」と言われれば、それがかなりしつこいものであっても、丁寧に断り続けるしかないのかもしれないが、個人の携帯電話にまで、あのしつこい営業電話がかかってくるようになるのかと思うと憂うつにならざるをえない。「営業を受けない権利」を主張する人々が出始めてもおかしくないのかもしれない。