九州国際大付属・佐倉の重心の低い構えは指導者と話し合いながら辿り着いたものだという(撮影・藤岡雅樹)

九州国際大付属・佐倉の重心の低い構えは指導者と話し合いながら辿り着いたものだという(撮影・藤岡雅樹)

まるで薩摩藩の剣術のような構え

 そして、182センチ、102キロという佐々木に見劣りすることのない立派な体格と独創的な打撃フォームで、存在感を放っているのが九州国際大付属の佐倉である。

 左打席に入る佐倉は、大股を開いて重心を落とし、バットを垂直に掲げる。そこから振り下ろしていく様は、「チェストー!!」の叫声と共に木刀を立木に振り落としていく薩摩藩に伝わった古流剣術、示現流のようだ。

「入学後の夏に、監督やコーチと話し合ってあの形になりました。足を広げるというよりは、低く構えて目線をぶらさず、重心が前にいかないように心がけていたらああいう形になりました。自分流の打ち方で、打撃を磨いていきたいです」

 そう明かす佐倉と、日本中の注目を集める佐々木との関係は、5年前の清宮幸太郎と村上宗隆(当時、熊本・九州学院高校。現・東京ヤクルト)の関係を想起してしまう。共に1年生の夏から甲子園の舞台に立ったが、村上は常に前を行く清宮をライバルに位置づけ、背中を追い、両者の立場はプロ入り後に完全に逆転した。高校生活の残り1年半で、佐々木と佐倉の立場が逆転することだってあるだろう。両者は共に昨年11月の明治神宮大会に出場したが、佐倉は同級生のライバルについてこう話していた。

「佐々木君はぜんぜん自分よりも凄いバッターで、ホームラン数もすごい。打席ではあまり佐々木君を意識せず、相手投手との対戦に集中していました」

 神宮大会では佐々木が初戦の東京・国学院久我山戦と、準決勝の広陵戦で計2本、佐倉が準決勝の大阪桐蔭戦で1本のアーチをかけた。そして、“広陵のボンズ”こと真鍋もまた準決勝の花巻東戦で本塁打を放ち、準決勝が行われた日は本塁打でもそろい踏みとなった(真鍋は大会を通じて15打数8安打と爆発した)。

 くしくも三者は同じ一塁手。プロ入り後に苦労を重ねる清宮のように、高卒の一塁手はプロ入り後、なかなか大成しないというのは定説だ。プロの世界において一塁は助っ人外国人やベテラン選手が守ることがどうしても多くなり、一塁しか守れない若手にはなかなかチャンスが回ってこないこともその要因だろう。現時点で一塁以外のポジションが考えづらい佐々木や佐倉とは異なり、左投げとはいえ外野も守れることは真鍋の強みである。

 そして大阪桐蔭の前田は、背番号は「14」ながら秋の大阪大会、近畿大会、神宮大会と主戦を任されてきた事実上のエースだ。筆者は大阪大会から神宮大会まで10試合ほど、大阪桐蔭の試合を取材したが、重要な試合でマウンドを託された前田が打ち込まれたシーンは一度もなかった。それもそうだろう。大阪桐蔭を率いる西谷浩一監督ですら、勝利した試合後にこんなことを話すことがあったくらいだ。

「大阪大会も近畿大会も、前田が打たれなかった。前田が打たれた時に、チームがどう機能するか、一度、見てみたかったんですけどね……」

 常にストライクを先行させ、有利なカウントを作ってから変化球で空振りや打ち損じを誘うのが前田の投球だ。捕手の松尾汐恩(彼もまた野球センスにあふれるドラフト候補)が「打者の手元で止まる」と評すチェンジアップは、高校生が捉えることは困難だろう。

 ただし、そんな前田から本塁打を放った選手がいる。神宮大会で対決した佐倉だった。試合後、前田はこう話した。

「たぶん、(本塁打を浴びたのは)公式戦で初めてだと思います」

 大阪桐蔭の投手陣は前田に加え、中学時代に日本代表歴を持つ3年生の投手が幾人もいて、打線もまた強打を誇る。優勝候補の大本命だ。

 新2年生がこれほど注目を集めるセンバツは過去にない。ここで紹介した4人は来秋のドラフトまで高校野球の話題を独占する逸材だろう。だからこそ、全国の新3年生の奮起もまた期待したいのである。

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