熱狂的支持者の意見に乗って作られた公約
一方、枝野幸男氏が代表のときは、上記のような炎上気質のある人々が中枢にいて、「#菅直人元首相を支持します」をトレンドに入れようとする熱狂的立憲民主党支持層のツイッター上の意見を重視するようになる。こうした人々は、一致団結して「アベ政治を許さない」というスタンスだったため、「共謀罪成立を許さない」「特定秘密保護補法成立を許さない」「森友・加計問題を許さない」「桜を見る会問題を許さない」「学術会議任命拒否問題を許さない」といったことをツイッターで何度も訴える。
これを見た立憲民主関係者は「これこそ世論だ!」「世の中の怒りはここにある!」「アベ政治打倒はこの点を突けばいい!」という思い込みをしてしまった。そして、学生運動を忘れられない高齢者を中心としたデモ隊がアベ政治打倒のため国会に押し寄せると「こんなに支持者がいるのか!」と彼らの路線にますます乗るようになる。これが如実に現れたのが、2021年9月の衆議院選挙で2回にわたって出された公約ではないだろうか。
「#政権取ってこれをやる」のハッシュタグをつけた公約は2021年9月7日に第一弾が発表された。大項目は、「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」で、7個あった。
1.補正予算の編成(新型コロナ緊急対策・少なくとも30兆円)
2.新型コロナ対策司令塔の設置
3.2022年度予算編成の見直し
4.日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命
5.スリランカ人ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開
6.「赤木ファイル」関連文書の開示
7.森友・加計・「桜」問題真相解明チームの設置
そして、同年9月13日に発表した第二弾は「自民党では実現しなかった多様性を認め合い『差別のない社会』へ」が大テーマで、以下が項目だ。
1.選択的夫婦別姓制度を想起に実現
2.LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現を目指す
3.DV対策や性暴力被害者支援など、困難を抱える女性への支援を充実
4.インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置
5.入国管理・難民認定制度を改善・透明化するとともに、入国管理制度を抜本的に見直し、多文化共生の取り組みを進める
個別の公約についての意見は控えるが、これらはツイッターで熱狂的支持者が最重要課題としていたものばかりである。「#野党共闘」も彼らからスローガンとして掲げられ、実際、日本共産党に近寄るそぶりをみせ「立憲共産党」などと揶揄され、連合など支持母体からも困惑の声が上がった。そして、衆院選は大惨敗した。
かくして、立憲民主党は本質からズレた人気取り発言をし、アンチ野党の人々から炎上させられるということが続いてきたのだ。現在の泉健太代表は中道方向を取り込んでいくことを宣言。ならばこれまでの熱烈支持層からは距離を置いた方がいいのではないか。その方が参議院選挙では議席を増やせるように思える。そして、炎上を減らすため、ツイッター中毒のようになったベテラン議員やOBたちには「少しは黙っててください」ぐらい言ってもいい。
なお、菅氏はこの騒動冷めやらぬ27日、ツイッターに〈自治体の役人が優遇されているという、維新の「役人天国」批判に低所得者層の人達が共鳴し、支持を広げたとの分析が有力〉と投稿した。要するに「維新の支持者は貧乏人」という趣旨の発言をしたわけだが、「本日のおまゆう案件(お前が言うか案件)」「元首相がレッテル貼り」と再び批判を受けている。