前出の加藤氏は著書『すごい左利き』で、「『直観』とは意識では覚えていない膨大な情報を蓄えている脳のデータベースから、精度が高く、より正確な情報を選択して導き出された結果」だと書いている。そのうえで、左利きの人は右脳を使うことで言語以外の五感の記憶も瞬時に引き出すことができ、直観力があると推論している。
ただし、独創性や直観力にしても、左利きの人だけに与えられた能力というわけではなく、誰でも左右の脳をバランスよく使うことで鍛えられるという。右利きの人が左手を使い、左利きの人が右手を使うことで、能力を伸ばせる可能性があるのだ。
一方、「左利きを巡っては、まだまだ研究が必要」だと加藤氏は言う。
「脳科学の論文では“ノイズ”になると考えられているのか、左利きの人が統計に数えられていないケースが少なくありません。そのような偏りがある世界では当事者たちは、“左利きという少数派の立場の自分たちが本当は優れているかもしれない”という視点や発想を持ちにくくなります。
多くの左利きの人がコンプレックスを抱えて生きているのではないかという問題意識が、この本を書いた動機の1つです。左利きの人への応援歌だと思っています」
※週刊ポスト2022年2月11日号