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フィギュアスケート漫画にはなぜ「傑作」が多いのか

日本人のフィギュアスケート熱を高めたジャネット・リン。1972年札幌五輪の可憐な演技(時事通信フォト)

日本人のフィギュアスケート熱を高めたジャネット・リン。1972年札幌五輪の可憐な演技(時事通信フォト)

リンクに立つ選手は「世界に対峙する人間の姿そのもの」

 スポーツとしての人気が高まることによって、ファンの要求も高くなり、漫画の解像度も上がっていくという良き相互作用が起きている。結果的に現実も漫画も、どちらもファンが増えるという効果も生まれているのだろう。

 一方で、スポーツとしての人気が高まる前から、漫画の人気ジャンルだったことを考えると、フィギュアスケートには本質的に豊かな「物語性」が宿っていると言えるのではないか。小田さんはこう語る。

「定期的に傑作漫画が生まれるフィギュアスケートに似たジャンルとしては、『ピアノ』漫画があります。ピアノも競技性と芸術性を兼ね備えたジャンルです。フィギュアスケートにおいては『技術』か『芸術』か、という論争が定期的に起こりますが、論争が起こるその二つを兼ね備えているからこそ、フィギュアスケートには物語が生まれるのです」

 漫画のみならず、実際のフィギュアスケート観戦もされるという小田さん。とりわけ浅田真央さんや高橋大輔選手に魅せられてきたという。最後にフィギュアスケートの魅力をこう伝えてくれた。

「広く、冷たいリンクにたった一人、あるいは二人で立つことの厳粛さと孤独感……。それはまさに世界に対峙する人間の姿そのものですよね。困難に立ち向かい、克服して、何かを手に入れる彼女ら/彼らの姿に、無限の物語を読み取ってしまうのは、それが私たちの人生の原体験に、強く訴えかけるからだと思うんです」

 熱戦が始まった北京五輪ではどのようなドラマが生まれるだろうか。記事に挙げた漫画は、電子版や文庫版などで現在も入手可能。漫画の中にも、豊穣なフィギュアスケートの世界が広がっている。五輪後に覗いてみてはいかがだろう。

取材・文/砂田明子

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