「4回転アクセルは右足首への負担が大きく、失敗すれば演技中止に追い込まれるかもしれない危険な技。年齢も考慮し、羽生選手にとって今回が最後の五輪になる可能性もある。まさに薄氷を踏む思いで臨む戦いになるでしょう」
新時代と世界の期待を背負って立つ“王者”らしく、羽生は「4回転半を携えて、3連覇を狙う」と全日本選手権の翌日、NHKのインタビューで語っている。だが、すでにスケーターとして最も大切なことを、羽生は築き上げている。ソチ五輪ペア日本代表で、大会やアイスショーの遠征で羽生と行動していた高橋成美さん(30才)はいう。
「昔からゆづは“感謝”の気持ちをしっかり持っている。私は“ゆづモーメント”と呼んでいるのですが、神社などでも、人一倍ていねいにごあいさつしています。自分の中に信念があるからこそなんでしょうね。
スケートリンクにも、支えてくれる人たちにもゆづは感謝をストレートに伝えますが、いま、ゆづと一緒に練習している選手たちは『それがトップアスリートのやることだ』と、かっこいいと思って真似しています。感謝なんて口にするのは恥ずかしい、スケートさえできればいいって思っていた選手もいたでしょうが、羽生選手がそうした姿勢を見せることで、スケーターの価値を上げてくれたと思います」
フィギュアスケートは、広いリンクの上をひとりきりで滑り、競技を行う。3月には、世界選手権も控えている。北京五輪が揺るがしたフィギュアスケート界で、羽生がどんなダンスを繰り広げるのか、この目に焼きつけたい。
※女性セブン2022年2月17・24日号