この時代のジュリーは、「声、容姿、表現力、歌唱力、そのすべてが時代を引き連れていた。沢田研二を中心に歌謡界が回っていた」と言うのは、小説家の小路幸也さんだ。
「彼は希代のパフォーマーであり、エンターテイナー。当時の一流の作詞家・作曲家が彼のために作った歌を、彼しか表現できない世界観で歌い上げ、多くの人を魅了したんです。数多くのヒット曲がありますが、『TOKIO』の衣装と仕掛けに度肝を抜かれました。
それまでも、『サムライ』には短編映画を観たような感覚を覚えたし、『カサブランカ・ダンディ』でジーンズのボタンを外してはくセンスなどなど、彼の魅力を挙げたら切りがない。日本中が彼の新しい曲に、衣装に、パフォーマンスにワクワクしていた。その最たるものが『夜のヒットスタジオ』だったと思います」(小路さん・以下同)
さらに、ジュリーの曲は、「聴く」だけでなく「映像を観る」ことでこそ真価がわかると力説する。作りこまれたミュージックビデオではなく、一度限りのセットのもと、生バンドの演奏でのパフォーマンスには、独特の緊張感があるからだ。
「沢田研二は、ビジュアル的にかっこよく、セクシーで中性的な魅力もある。本当に美しく、アーティストとしての実力も備えた、別格のスーパースター。映像では、その時代の空気感も味わうことができます。画面に映っていないスタッフたちの熱量までもが伝わってきます。だから、『沢田研二を観ろ』と言いたい」
いまから40年ほど前のパフォーマンスながら、日本のテレビ界・歌謡界が元気だった時代のジュリーは、色あせるどころか、輝いている。懐かしむだけでなく、若い世代にもぜひとも見てほしい。
【プロフィール】
小説家・小路幸也さん/学生時代に仲間とバンドを組んでミュージシャンを目指すが、広告制作会社勤務を経て小説家に。著書に『東京バンドワゴン』シリーズ(集英社)などがある。最新刊は『花咲小路二丁目の寫眞館』(ポプラ社)。
テレビプロデューサー・疋田拓さん/『夜ヒット』の立ち上げから番組に参加し、1977〜1987年にプロデューサーを務めた“ミスター夜ヒット”。令和3年度文化庁長官表彰。現在は番組制作会社『プロデュース&ディレクション』代表。
取材・文/山下和恵 イラスト/諏岸 撮影/浅野剛 写真/女性セブン写真部
※女性セブン2022年2月17・24日号