高齢になればなるほど新しいテクノロジーを使いこなすのは難しくなり、慣れた環境を維持したがるものだ。そこに目をつけた一部の業者は、雑誌などに広告を出し「DVDとDVDデッキ」の抱き合わせ販売を十数年前から開始。デッキは、DVDを挿入しただけで自動的に再生される仕組みで、無駄なボタンや液晶画面などは一切ない。
「自宅のパソコンでも視聴可能ですが、再生方法がわからない、万一DVDが詰まったりして家族にバレたらどうしよう。そんな不安を抱く方々、主に高齢者に歓迎されました。部屋のテレビにさっと繋いでこっそり見る。路上でDVDを買う客層も似ていますが、通販だと足が付く可能性もある。やはり路上で買う方が良いのです」(書店スタッフ)
冒頭で紹介した摘発事例で警視庁が「一掃した」と言っていたように、高齢者に歓迎されていたとはいえ、コロナ禍前には販売店も、キャッチの姿も見えなくなっていた。その後、コロナで自粛生活を強いらた人々からの需要が増えたというが、こっそり復活したキャッチや販売業者は、相変わらず路上に立ってはいるものの、摘発を恐れてかその営業スタイルには若干の変化が見られる。
かつては、路上でキャッチの誘いに乗ると、マンションや雑居ビルの一室に設けられた店舗に案内されるのが常で、カタログなどを見ながら好みのDVDを選ぶ方式だった。もしくは、キャッチに好みを伝えて、オーダーに応じたDVDをキャッチが持ってくる、そんなケースもあったが、相場の激変によって案内やオススメの仕方が大きく変わった。
「以前はVHSテープ10本1万円などという価格設定でした。今では交渉次第でDVD20枚で5000円など、かなり安くなっているようですが、そのかわり客の好みは無視される。客引きのじいさんに捕まって『買う』というと、すぐに他の人間が紙袋などに入れたDVD20枚を持ってくる。枚数も多いし安いし、客も納得して持ち帰る」(書店スタッフ)
このようにして販売されているDVDは、ほとんどが海賊版だ。一般に販売されている作品の違法ダビング、もしくは海外にサーバーを置く日本人向けの有料サイトにアップされていた映像をやはり勝手にダウンロードし、DVDに収録して販売している。DVD販売の仕組みを話してくれた書店スタッフは「安い」と言うが、そもそも制作費はタダ同然、権利者に報酬も払っていないのだから元手はほとんどかからないため、多少安く売ったとしても、ボロ儲けには変わらないのである。