52歳の新人調教師として再スタートする蛯名正義氏
いまはなんだかフラットな気持ちです。ジョッキー時代、年の初めには「今年は勝てるだろうか」と思ったし、3、4週勝てないと少し焦って、2つ勝つまでは落ち着きませんでした。毎週土曜日の最初のレースの時にも、いつも通り乗れるだろうかという不安も少しありました。言ってみれば、その繰り返しだったような気がします。調教師になっても、それは同じなのかもしれません。
この2月11日、僕の師匠である矢野進先生が、84歳で亡くなられました。ギャロップダイナやブロードマインドなど重賞36勝の名伯楽です。コロナの影響で会う機会も少なくなっておりましたが、昨年12月15日にやっとお目にかかることができ、開業することをとても喜んでくれました。
僕の調教師としてのデビューは矢野先生出身の中山競馬場になると思います。その時は試験勉強中に「調教師になったら使いなさい」とプレゼントしてくれた先生愛用の双眼鏡を手にしているはずです。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。今年2月で騎手を引退、来年3月に52歳の新人調教師として再スタートする予定。
※週刊ポスト2022年3月11日号