それまでヒロインとして出演していた深津が、別のヒロイン(川栄李奈)を支える母親役にシフトすることに、難しさはなかったのだろうか。
「深津さん以外が演じていたら、視聴者も違和感を覚えていたかもしれません。普通なら、それまでヒロインだったるいの目線でドラマを観てしまうはずですが、深津さんが控えめな引きの演技でヒロインの川栄さんの天真爛漫さを際立たせているため、自然とひなたへのヒロイン交代が印象づけられました。控えめでも独特の華がある深津さんにしかできない“離れ業”と言っていいでしょう。
一方で、ただの脇役になったわけではなく、母親に捨てられて暗い影を背負っていたるいが、立派な母親に成長していく姿も描かれています。落ち込むひなたを励ます場面で、『おかあちゃん、見参』と見栄を切るシーンは象徴的でした。
近年の朝ドラでは、『半分、青い』の松雪泰子、『ひよっこ』の木村佳乃、『なつぞら』の松嶋菜々子(養母)といった主役級の女優たちがヒロインの母を演じて新境地を開いてきましたが、深津さんにとっても理想の母親役デビューとなったのではないでしょうか」(同前)