まずは3か月ということで、服用を開始することを決意した。約6万円という大金を支払ったのだから、なんとか元をとってやりたいという気持ちがあふれてくる。
とはいえ、飲み薬が1日1錠とシャワーのあとに塗り薬をシュッシュッと吹きかけるだけなので、特別な負担感もなく、すぐに習慣化した。
そうして薄毛治療をしていることすら意識しなくなった1か月後、大きな変化があった。いつも通りシャンプーを手にとり、髪を洗っていたその時、指先に確かな生命感を感じたのだ。ワシワシという感触。しっかりした手応え。間違いない、生えてきた!
しかし、またもリビングの妻は「べつに変わってないけど」とクールな対応。友人からも「全然分からない」「どこが変わったの?」と期待していた反応は返ってこない。
正直、この時は少し気落ちした。手触りが変わっても、見た目が変わらなければ意味がない。本当に治療は効いているのだろうか。
それからは自分から髪のことを話題にしないようになった。「全然変わってない」と言われるのは、月に2万円を払っている身には、そこそこショックだったからだ。
そんな状況が一変したのは、治療開始から3か月が経った頃。
自宅のソファに寝転んで本を読んでいると、背後で妻と娘が何か言っている。なになに、気づかないふりをしながら耳を澄ますと……。
「ママ、なんかパパの髪、増えた気がしない?」
「そうね。たしかに地肌が見えなくなったし、全体的に黒くなった気がするわね」
思わず心の中でガッツポーズをしてしまう。なんとなくそんな気はしていた。でも、人から言われると嬉しさは格別だ。生えてきた! ついに奇跡が起きたのだ!
そういえば、峯岸医師が言っていた。
「治療を開始すると、抜け毛が減って、髪の感触がしっかりしてきた、という人が多いです。早い人は服用から1か月くらいでそれを体感できます。3か月もすれば感触はもちろん、ご家族や周囲から見た目の変化を指摘されるというケースも増えますね」