オバ:ゴミ清掃員になってまず驚いたのはどんなこと?
滝沢:それはもう量ですね。この仕事を始める前は、ゴミ清掃員は自分の住んでいるところからゴミを運んだら、それで仕事はおしまいだと思っていたんです。
オバ:違うの?
滝沢:違いますね(笑い)。では労働時間から話します。
オバ:お願いします。
滝沢:朝6時半に出勤して、真っ先にするのがアルコールチェックです。前夜のお酒が残っていたりしたらその場で帰されます。それから3人1組で清掃車に乗って移動して8時から清掃業務を始めます。集積所を順に回って2t車をいっぱいにしたら清掃工場に行ってゴミを捨てる。これを1日6往復して、午後3時に車を洗って終わる。
オバ:ええ〜ッ、6往復も?
滝沢:はい。清掃車1台でだいたい1日10〜12tくらい回収します。ぼくの担当地域では1日10〜20台の清掃車が稼働してます。
オバ:どんだけゴミが……。
滝沢:これが東京都全体なら、日本全国だったらと‥‥。
オバ:そりゃ考えちゃうわね。
古い石油が手にかかって……
オバ:なかにはとんでもない物を捨てる人もいるでしょ?
滝沢:みんな一度や二度は怖い目にあっていますね。ぼくは口の閉まっていない缶の中の古い石油が手にかかって、そのままにしていたら手の皮がペロリとむけてしまったことがあります【1】。
オバ:ええ〜っ! 何それ。
滝沢:古い石油はついたらすぐに拭かないとダメだということを知らなかったんです。もっと危険なのがバッテリー。中は硫酸なんですよ【2】。
口を粘着テープで閉じたペットボトルの中にオシッコが入っていて、それをかぶってしまった先輩もいるし、作業中、「ギャーッ」と悲鳴があがったので見たら、袋に注射針がビッシリ入っていたとか【3】。
そこまで危険ではないけれど、小麦粉や片栗粉が入っているビニール袋がローラーで破裂すると飛びのきますね【4】。
ゴミを捨てられない日がやってくる
オバ:東京都のゴミといえば私たちの世代だと真っ先に浮かぶのが夢の島。埋立地にずいぶんふざけた名前をつけたもんだと思っていたけど、最近、聞かないよね。
滝沢:厳密にいえば場所は少し変わっているんですけど、いまでも東京湾に埋め立てていますよ。
オバ:知らなかった、てか、知ろうとしなかったのか。
滝沢:東京ではここが最終処分場です。地域ごとに処分場があるんですけど、それが限界に近づいている。東京は50年、市によってはあと8年しかもたない。日本全体で平均したら約21年半で処分場はいっぱいになってしまいます。東京の場合、あと50年でいっぱいになったらもう広げられません。大型船がすれ違えなくなって貿易港として成り立たなくなる。
オバ:そんなぁ……。その後、どうするの?