花さんはネット上で多くの誹謗中傷を受けたが、名誉毀損罪に問うことが難しく、刑事罰がもっとも軽い侮辱罪が適用された。花さんへの誹謗中傷で立件された2人は侮辱罪での刑事処分を受けたものの、科料9000円の略式命令にとどまった。「人を死に追いやっておいてわずか9000円なのか」と納得がいかない人が多い結果となったのだ。また、侮辱罪は公訴時効がわずか1年だったため、それ以外の立件はできなかった。
そこで、侮辱罪を厳罰化し、公訴時効も延びる改正が行われ、3年前までさかのぼって罪を問えるようになったというわけだ。この改定が抑止効果になり、ネット上の誹謗中傷が減ることが期待されている。
リツイート、「いいね」で罪に問われる可能性も
侮辱罪厳罰化は、多くの人にとって他人事ではない話だ。多くの人が気軽にしてしまいがちな「リツイート」「シェア」「いいね」などにもリスクがあることをご存知だろうか。
2020年11月、ジャーナリストの伊藤詩織さんが漫画家のはすみとしこさんに対して損害賠償を求めた訴訟で、はすみさんは88万円の支払いを命じられた。Twitterに投稿されたイラストで名誉が毀損されたという理由だ。
この時、はすみさんのツイートをリツイートした2人に対しても、賠償命令が言い渡されている。リツイートは「元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為」とされ、罰則の対象とされたのだ。
さらに現在、伊藤さんを誹謗中傷する複数のツイートに「いいね」をしたとして、自民党の杉田水脈衆院議員に対して損害賠償を求める訴訟を起こしており、判決が注目されている。杉田議員の公式Twitterには当時11万人のフォロワーがおり、誹謗中傷ツイートに対して好感を表明する「いいね」をする行為が、伊藤さんの名誉感情侵害行為に当たるというわけだ。これは、「いいね」だけで罪に問われるかどうかに注目が集まる裁判となっている。
海外の事例だが、実際に「いいね」で罪に問われた例はある。2017年にスイスにおいて、Facebookで動物保護活動家を「人種差別主義者」「反ユダヤ主義者」などとする中傷投稿に対して「いいね」をした男性に対して、4000スイスフラン(約45万円)の罰金が科せられている。