しかし、福原にとって海外生活は当初つらいものだった。2020年2月に台湾限定で発売されたフォトエッセイ『不管怎樣的哭法,我都準備好了(どんな泣き方でも、私は準備ができている)』の中で、結婚して台湾に来たばかりの頃について「もしかすると当時の私はうつ病だったのかもしれない」と振り返っている。
《身のまわりには夫を除いて、知り合いがいません。江の練習場から近いところに居を構えるために、私たちは近場で部屋を探して、まずそこに住みました。(中略)とにかく退屈だった》
結婚まもない2018年には、中国で配信されたリアリティ番組で「毎日100回キスしたい」という夫の希望のもと、福原と江は朝から晩まで61回ものキスを披露した。ラブラブ夫婦と話題になったが、実際の結婚生活はそういったイメージと少し異なるものだったようだ。福原は自著でこのように綴っている。
《実際、私と江の関係は皆さんが思い描くような『甘い』ものじゃないです。(中略)彼は『3才9か月から卓球をはじめた福原愛』として私のことを見ていませんし、お姫様扱いもしません。それによって『本当の私』が見えてくるのです》
ストレートな会話を好む江と接する中で、福原も自分自身のありのままの感情を見つめるようになったという。福原の恋愛観とは、このようなものだ。
《本当にあなたのことを愛する人は、あなたの心を解放してくれる。それによって自分のことを見つめ直すことができ、改めて自分自身を理解できるのです》
離婚騒動の中で、江のモラハラや義実家との不仲も取りざたされた。福原にとって、Aさんが新たな「心を解放」してくれる相手だったのかもしれない。