エース候補の新人に求めてきたこと
それから2年が経ったわけだが、今年の佐々木は体つきが明らかに違うという。
「お尻周辺が大きくなって躍動感がある。下半身が鍛えられ、体幹がしっかりしてきたと思います。投球動作のなかでしっかり静止できている印象ですね。ただ、先発ローテを守るというのは大変なことで、体を大きくする必要はないが、自分のペースを覚えること。主軸と下位のバッターとでは力感を変えていくなどの必要がある。遊びの部分を入れていけば、もっと楽に投げられると思います。まだピッチングが若くて、覚えることがたくさんあるが、経験を積んでいけば手がつけられないピッチャーになると思います」
捕手として豊富なキャリアのある細川氏から見て、球界を代表するエースに育っていくような投手に、共通項はあるのだろうか。
「わかりやすい共通点というのがないんですね。エースとして育つような選手は個性を持っている。それぞれ違った理由で打たれづらいし、攻略されづらい印象です。ただ、新人時代からマウンド度胸というかマウンドさばきが卓越しているところは共通しているかもしれません」
細川氏がそうしたルーキーの球を受ける際には、心懸けていることがあったという。
「とにかく新人にはストレートをしっかり投げさせましたね。変化球でゴチョゴチョやるのではなく、真っすぐで勝負する。涌井の時もそうでした。ストレートはピッチャーにとって大事な球で、まずはストレートをレベルアップさせるべきだと考えています。
涌井の1年目は1勝6敗でしたが、1年目にはほとんど変化球のサインを出さずにストレートだけで勝負した結果でした。それで1年目をやりきった涌井本人が何かをつかんで、2年目に12勝、3年目に17勝を挙げている。新人にはコントロールは求めないほうがいいと思います。しっかり腕を振って、自分の持っているものをしっかり出し切る。それでいいと思います」
そうした考え方を基本としたうえで、バッテリー間でコミュニケーションを取ることも重要だと細川氏は考えている。
「期待の新人が入団してくると、キャンプのブルペンでは他のキャッチャーに捕らせて、自分はまずは投げる姿を横でしっかり観察する。バランスや癖を分析したうえで、ブルペンで球を受けるようにしていました。後ろや横からも見ることで、そのピッチャーのいい時と悪い時がわかるんです。シーズンが始まると課題はどんどん出てくるので、そこは会話をしながら解決していくことになる。
若い時は怒ったりして怖かったと言われましたが、10年目にソフトバンクに移籍した頃は当日ではなく翌日に話し掛けたりして、かなり気を遣うようになっていましたね(苦笑)。ピッチャーと同じで実戦で経験を重ねることで成長させてもらいました」
プロで経験を積み重ねてきた細川氏も、佐々木には大きな期待を寄せている。
「今年の朗希はやると思いますよ。投げっぷりがまったく違う。3年目で慣れてきたのか、プロの顔つきになっていると思います」
※週刊ポスト2022年4月8・15日号