国内

安倍元首相の“親ロシア外交” プーチン氏をエスカレートさせた一因か

過去の外交も影響?(時事通信フォト)

過去の外交も影響?(時事通信フォト)

 思い返せば、プーチン大統領の非人道的なウクライナ侵略は2014年のクリミア併合から始まった。だが、日本には、併合後もプーチン氏の甘言に騙され、たらし込まれた「協力者」たちがいる。その筆頭が安倍晋三・元首相だろう。

「無限の可能性を秘めた二国間関係を未来に向けて切り開くために、私は、ウラジーミル、あなたと一緒に、力の限り、日本とロシアの関係を前進させる覚悟です」

 安倍氏は2016年にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムのスピーチで、プーチン氏をファーストネームで呼んでそう語りかけた。クリミア併合の2年後、欧米主導でロシアに経済制裁が科され、日本も加わっていたさなかのことだ。

 北方領土返還に意欲的だった安倍氏は、首相在任中、プーチン氏と27回の首脳会談を行なった。領土交渉では国の「四島返還」方針を「二島返還」へと事実上転換、「北方領土は日本固有の領土」という主張さえ封印して譲歩を重ねた。その年5月の日露首脳会談では8項目の経済協力を表明し、カネも出したが、結局、成果はなかった。まんまと騙されたのだ。

 そうしたクリミア併合を黙認するかのような安倍氏の姿勢が、プーチン氏を“西側の経済制裁など切り崩せる”と慢心させ、今回の軍事侵攻へと事態をエスカレートさせた一因となったと批判されても仕方がない。軍事・政治評論家の篠原常一郎氏が指摘する。

「安倍氏は日本よりロシアにうまみのある経済協力でプーチンに“おいしいとこ取り”されてしまうマイナスを作った。27回の首脳会談をあれだけアピールしながら、今回の軍事侵攻にあたって『首相特使としてプーチンを諫めに行くべきだ』と出番を期待する声があるのに、本人が背を向けたままなのは二重の意味で責任回避ではないか」

 その安倍政権の親露外交を現場で担ったのが、経産相兼ロシア経済分野協力担当大臣を務めた世耕弘成・現参院幹事長だ。

「世耕氏はロシアの軍事侵攻を『重大な国際法違反で絶対容認できない』と述べたが、サハリン沖の資源開発からの日本企業の撤退については後ろ向き。プーチン批判をしているのは経産相時代にロシアの資源開発に前のめりだった責任逃れにしか見えない」(篠原氏)

 当時外相だった岸田文雄・首相もクリミア併合後の2016年に訪露してプーチン氏、ラブロフ外相と会談、経済協力の詰めの交渉を担った。今国会では、外相時代から手がけたそのロシア経済協力予算を廃止すべきと要求されたが、岸田氏は「経済制裁を科す」と言いながらロシア協力予算は減額さえしないで成立させるという“二枚舌”を使っている。

※週刊ポスト2022年4月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト