――あの10年を総裁選の準備に充てたら、とっくに女性初の総理大臣になっていたかもしれない。
「でも、回り道だってすべて私にとっては財産だから。そんなことを言ったら、郵政民営化に造反した時からアウトですよ」
――郵政といえば、小泉純一郎さんとの交流を続けているそうですね。
「実は2日前に小泉総理とご飯を約束していたんだけど、『まん防』だったので、80歳のお誕生日プレゼントだけを届けに行きました」
――へえ! 呉越同舟。
「小泉チルドレンと呼ばれていた人たちは今、どれだけつながりがあるのでしょう。私だけじゃないですかね、今、現職議員で小泉総理と定期的にご飯を食べているのは。私は自分の損得で動いてないので、小泉総理はそれをわかっていてくれて、深い友情があります。
私が小渕恵三内閣で郵政相(1998年7月~99年10月)になった、その前から小泉総理って民営化って言っているんですよ。でも、私には私の道があった。友情があっても、政治家としてのスタンスが違うので、小泉純一郎という稀代の怪物とちゃんとバトッたんですよ、女性なのに。
あの時、男性たちはみんな尻尾巻いて逃げちゃったじゃない。だから、私は正々堂々と戦ってよかったし、あの回り道があったから30年もやってこられた」
――無所属の時間は「人間」を育てますよね。
「そうですね。無所属だから、国会の片隅の小さいタコ部屋に入れられたけど、佐賀選出の保利耕輔先生(元党政調会長・同国対委員長)という先輩がそばにいてくださったから、私も居心地が良かったです。保利先生は控え目だけど、総理になってもおかしくないぐらいまっすぐで、強い心を持った方でした」
(第5回につづく)
【プロフィール】
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、帝国ホテルに入社。1987年、岐阜県議会議員(当時最年少)に。1993年、衆議院議員に初当選。その後、郵政大臣、総務大臣、女性活躍担当大臣、マイナンバー制度担当大臣、幹事長代行などを歴任。現在は、男女共同参画担当大臣。衆院岐阜1区選出、当選10回。
【インタビュアー・構成】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が好評発売中。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号