プーチン氏への抗議で拘束されるサシャさん(写真/アフロ)
服を脱がされナイフで髪を切られた
しかし、2018年、オクサナさんは亡命先のフランスで、変死体で見つかった。
「アパートで自殺したと報じられました。“遺書があり、事件性はない”ということで処理されましたが、その5年前、抗議活動に闘志を燃やしていたオクサナさんが自ら命を絶つとは到底思えません」
オクサナさんの死の真相はいまとなっては闇のなかだ。しかし、メンバーは実際、プーチン氏周辺から攻撃を受けたことがあるという。
「オクサナさん含む数名が2011年12月にベラルーシで、プーチン氏の“子分”であるルカシェンコ大統領の再選に対する抗議活動を行った。その際、元KGB(旧ソ連国家保安委員会)の工作員と思われる人物に拉致・監禁されました。
そのうち3人は、監禁中に目隠しをされ、灯油をかけられ、服を脱がされたうえ“火をつけるぞ”と脅され、ナイフで髪を切られました。彼女たちは、拉致現場から300kmも離れた森のなかで裸のまま解放され、徒歩で小さな村にたどり着いたと話していました」
そんななかで起きた今回のウクライナ侵攻。奥窪さんはメンバーの安否を確かめるため、2月末に連絡をとった。
「まず『フェメン』の広報担当だったアンナ・フツォルさんにメールを送りましたが、返事はありません。彼女は国外に亡命したとは聞いていないのでウクライナで被害にあっているかもしれません。
何より気がかりなのは、オクサナさんとともにプーチン氏に直接抗議したことがあるメンバーのオレクサンドラ・シェブチェンコさんの安否です。彼女は“サシャ”の愛称で知られ、『フェメン』の中心的なメンバーでした。彼女はフランスに亡命したと聞いているのでウクライナで被害にあっていないと思いますが、オクサナさんのことがあるので心配です。サシャにも2月末にメールを送りましたが、いまだに返信がありません」
奥窪さんが2012年に初めて「フェメン」を取材した際、サシャは、「チェルノブイリという原発事故を体験した国民として、福島の事故に非常に胸を痛めている」と、東日本大震災で被害を受けた日本のことを心配していた。
「そのとき、彼女たちに和柄のハンカチをプレゼントすると、サシャは“着物の柄のような日本のデザインが好きだったのでうれしい”と喜んでくれました。その屈託のない笑顔が忘れられません。彼女たちは抗議活動に闘志を燃やしていますが、雑談中は日本の20才前後の女性と変わらない普通の子たちです。無事だといいのですが……」
フランスに亡命した「フェメン」創設時のメンバーであるイナ・シェブチェンコさんは3月18日、仏テレビ局のインタビューでこう話した。
「プーチンはウクライナに侵攻しているのではない。ウクライナを滅ぼそうとしている」
世界各国にいる「フェメン」メンバーたちによるプーチン氏に対する抗議活動は、戦争が終わるまで続くだろう。
※女性セブン2022年4月21日号
変死したオクサナさんは芸術家としても活躍(写真/アフロ)
テレビのインタビューでプーチン氏を非難したイナさん(写真/アフロ)
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