スポーツ

巨人V9の陰にチーム内の熾烈なライバル関係 補強を続けて競争を促した

球史に残る名コンビが主軸を張った(写真/共同通信社)

球史に残る名コンビが主軸を張った(写真/共同通信社)

 2022年のプロ野球は、“BIGBOSS”こと日本ハム・新庄剛志監督の一挙手一投足に話題が集まっているが、開幕ダッシュには失敗。話題性も重要だが、やはりプロ野球は結果が第一だ。その点において傑出した成績を残したのがV9巨人の川上哲治監督だが、彼はどんな方法で9連覇という偉業をなし得たのか。(文中敬称略)【全4回の第3回。第1回から読む

 * * *
 チーム内の競争は熾烈だった。川上があえていくつもの“ライバル関係”をつくってチームを活性化したと証言するのは、遊撃手のレギュラーを務めた黒江透修である。

「ONがいちばん分かりやすいですが、巨人の選手はライバルが他球団よりもチーム内にいた。森(祇晶)さんもキャッチャーに大橋(勲)や吉田(孝司)、槌田(誠)といったアマの大物が入ってきて、蹴落とすために頑張った。ボクも近鉄でショートのレギュラーだった矢ノ浦(国満)が加入して競わされた。川上さんは、選手にあぐらをかかせないために、どんどん補強したのです」

 1965年に20勝4敗の成績を挙げた中村稔は昨年、鬼籍に入ったが、生前の取材でやはりチーム内の競争に言及していた。

「キャッチャーの森が打球を当てて足を引きずりながら帰ってくると、川上さんが“森、もういいぞ。おい、吉田~”と言う。すると森は“大丈夫です”としっかりとした足取りになる。競争社会ですからね」

 国鉄の大エース・金田正一の補強も同様の効果を生んだ。川上・巨人の2年目からチームを支えた“エースのジョー”こと城之内邦雄が言う。

「カネさんに負けたくないということで、カネさんの入団1年目に私が21勝、中村さんが20勝、宮田(征典)さんも20勝と、20勝ピッチャーが3人も出た。プロ野球始まって以来のことでした」

 選手たちを競争させ、育てるコーチ陣では、打撃コーチ・荒川博の“荒川道場”がよく知られている。一本足打法を完成させて“世界の王”“を育てあげた。黒江も門下生のひとりだ。

「(大毎の)榎本喜八さんが荒川さんの一番弟子で、二番弟子がワンちゃん。荒川道場で練習をしていると、途中で榎本さんがやってきてバットを振るが、これがとてつもなく速かった。見るだけでも勉強になりましたよ。

 ふすまを外して水平にして持ち上げ、その上を通るようにレベルスイングをする。バットが下から入ったりすると、バットが当たってしまう。上から叩く意識でないとできない素振りでした」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト