情報メディア法が専門の田島泰彦・早大非常勤講師(元上智大学新聞学科教授)には「朝日の変質」がこう映っている。
「朝日は基本的にジャーナリズムの権力監視は当然という立場だけれど、必ずしもすべてのデスクや記者が共有しているとは限らない。それはデスクや記者の劣化というより、全体的に朝日という新聞社が権力監視やジャーナリズムとは異なる方向になっているのではないかと危惧しています。
一般に大メディアはそうですが、特に朝日に入る人の多くは家庭環境、出身大学など比較的狭い範囲のバックグラウンドから選抜され、役人やエリートが抱く社会の見方と重なる部分も多く、記者自身も権力の監視というよりその一翼を担い、一緒に進んできた部分が強い。政治部や外信は特にそうで、取材対象が政治家や各国の権力者中心であることも関係している。
権力者と日常的に付き合うと自分ではそうではないと思っていても客観的には一体化とみられることになる。そうなったら政治家に手足のように使われてしまうだけだ。一方で、野党と仲良くして政権交代できたら新政権を支える記者として記事を作ろうと本気で考えている記者さえいる。そういう記者も、ジャーナリズムをはき違えている」
かつて反権力ともてはやされた朝日ジャーナリズムの大きな危機である。
※週刊ポスト2022年4月29日号