感想戦をする藤井竜王(当時四段)を見守る杉本師匠(時事通信フォト)

感想戦をする藤井竜王(当時四段)を見守る杉本師匠(時事通信フォト)

──将棋以外のことで、藤井さんに何かを教える機会はありますか?

杉本:将棋界の先輩として経験談を話すぐらいですかねえ。永瀬さんはタイトル戦の封じ手(※2日制の対局で、初日終了時の手番側が指す手を紙に書いて封じること。指しかけの夜に考慮時間の有利不利が生じないために行なう)のことを聞かれませんでしたか?

永瀬:逆なんです。2日制のタイトル戦に出るのは藤井さんのほうが早かったので、むしろ教えてもらいました。

 私が教えたことと言えば、10歳年上なので、胃もたれが始まるタイミングや、体が痛くなってくる時期とかですね。

杉本:藤井竜王は自ら学んでいくタイプの人間です。年少の頃から話している内容が実年齢より3つ4つ年上に見えました。小学1年生だったら4年生くらいですね。体の大きさではなく雰囲気です。周りの兄弟子は3つ4つ年上でしたが、会話が普通に成立していました。

人生を変えてもらった

──私も取材で中学3年生当時の藤井さんとメールのやり取りをしましたが、誤字脱字がまったくない明晰な文章に驚きました。

杉本:そうでしたか。最初に永瀬さんが、藤井竜王は序盤から時間を使うという話をしていましたが、小学1年生の頃から時間を目一杯使っていました。これは羽生世代に多い時間の使い方で、今の若手にしてはかなり珍しいタイプ。時間を残すのは急所の終盤で間違えたくないから。でも正解を出し続けられるのなら、妥協せずに考え抜くのがいい。それを実行できているのが藤井竜王なんです。私も長考派なので、まさか悪影響ではないでしょうけど(笑)。

──お二人は藤井さんからどんな影響を受けましたか?

永瀬:藤井さんと研究会を始めた頃の自分は、今後もタイトル戦に出られるかどうかわからないレベルでした。でも藤井さんの将棋への真摯な姿を見て、考え方が根本的に変わりました。謙虚な人間性など、棋士はこうあらねばならないと痛感しました。藤井さんにしがみつくことによって棋力が上がり、タイトルを獲得できたので本当に幸運です。自分の人生を変えてくれた人の一人が藤井さんですね。

杉本:「藤井竜王の師匠」という認知が広まり、将棋を知らない方との接点が増えました。仕事のため、地元の名古屋でタクシーに乗ると、かなりの高確率で話しかけられます。あと自分の将棋への好影響も間違いなくあります。彼を見ていると、何歳になってもやる気があれば成長できると思わせてくれます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン