シーズン開幕前に矢野燿大監督は今季限りでの監督退任を表明(時事通信フォト)
落合氏のYouTubeチャンネルのコメント欄にも「阪神の監督になってほしい」といった投稿が相次いでいる。
結果を出せるからこその「オレ流」であり、今の阪神に欠けているのは何より結果だ。かつて“外様”の野村氏が阪神監督に迎えられたのは、吉田義男監督のもとで首位と27ゲーム差の最下位に沈んだ後のことだった。野村氏が戦力を整備し、引き継いだ星野氏がチームを優勝に導いた。矢野監督のもとで低迷し、再建待ったなしの状況を当時と重ねる人が多いのは当然とも言える。
「中日時代の落合監督は本当に勝つことに徹していた。守りを固め、バントと犠飛で点を入れ、先発、中継ぎ、抑えを確立して方程式を作り上げる。面白みがあるとは言い難いが、しっかり勝つ」(ベテラン記者)
2007年の日本シリーズで完全試合を目前にした山井大介を交代させ、9回から守護神・岩瀬仁紀をマウンドに送ったのが象徴的な落合采配だろう。結果を出すためになんでもやる姿勢について、落合監督時代の中日担当の記者はこう振り返る。
「考えてみると、野村監督、星野監督と落合監督の長所には共通する点がある。マスコミを使いながら選手を一つの方向に動かす能力です。それぞれスタイルは違いますが、野村監督は練習中にベンチで記者にわかりやすく解説し、紙面を通じてそれが選手に伝わるようにした。星野監督はプライベートでも記者を可愛がり、味方につけた。落合監督は“そんなこともわからないの?”と記者のプライドを刺激する方法で記事を書かせる。
当時の荒木雅博・井端弘和のアライバコンビも、最初は落合監督が“こんな凄い二遊間をなぜ褒めない“と記者の目が節穴のように言って流れを作った。記事が出たら選手たちがその気になって、結果につながる。外様の阪神監督に求められるマスコミ操縦術は持ち合わせている」
はたして“落合監督”という劇薬は実現するのか──。
※週刊ポスト2022年5月27日号
