この笑顔

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 先日このキャンプ場で、奥田民生やPUFFYの生演奏が聴ける「唐津シーサイドキャンプ2022 in 玄界灘」というロックフェスが開かれたんだけど、会場装飾として使われたのが地元・唐津の竹。竹に穴を開け、中に電球を入れて電飾にした際、その作業に携わっていたのが山崎さん。彼が私に竹の穴開け作業をやらせてくれてね。「やってみますか~」と言う感じがまた自然でさりげないんだわ。

 自然といえば食。この土地の美味しいものの話をしだしたらきりがないけど、炊き立てのご飯には腰を抜かしたね。ひと口入れたらうまいなんてもんじゃない、魔界だよ。すいすい、どんどん、もっともっと。

 そして唐津湾から揚がったばかりの魚といったら、あぁ、もうダメだ。波戸岬にずらっと並んだサザエの壺焼き小屋を知らずに生きてきたことを心から後悔したもんね。同時に、いまさらながら、この味に出会えてよかったぁと心から思った。

 あと、何気ないショップに並んでいる商品の完成度の高さやオシャレ度にも目を見張る。地方の土産物というと安かろう悪かろうという印象があるけど、ここ唐津の焼き物には目が洗われるよう。

 町の真ん中には、ここの出身者で東京駅の設計者でもある建築家・辰野金吾の「旧唐津銀行」がでーん。見上げれば、そう遠くない位置に唐津城も構えていて、城下町のしっとりとした風情がまた落ち着くのよ。

 と、私の感じた唐津を洗いざらい中川さんにぶつけてみたところ、「今夜、飲みませんか」と誘われたの。その夜、佐賀県庁・移住支援室の栁川智弘さん、同じく広報課の上野裕也さんと約束していたんだって。その居酒屋で聞いた話が衝撃だったんだわ。

 いまでこそ中川さんは「唐津、いいっしょ」と繰り返し、この地の海を山を愛しているけれど、一度だけ、「もうワシ、この土地、無理だわ」という局面があったのだそう。

「唐津のよさをメディアに発信し続けて、実際この町に触れてほしくて、東京から友人・知人をじゃんじゃん呼んでいたある日、ツイッターに『唐津から出ていけ』って書き込みされたんじゃ。ワシ、キレてしもうて」

 怒った中川さんは、どこの方言かわからん言葉をしゃべりだした。ネットニュースの編集者だから、SNSでのやり取りやケンカには慣れているはずだけど、こと唐津愛に関しては仕事抜き、採算度外視。それだけに、心ない言葉が彼の心の芯を喰ったのね。

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