芸能

『オールドルーキー』の綾野剛 プライドを思い切り捨てきったような演技が圧巻

綾野剛も

綾野剛は「アスリートのセカンドキャリア」に挑む

 注目の作品の幕が続々と開いている。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 梅雨を飛び越し猛暑に突入した日本列島。あまりの暑さに家に籠もりたくなる日々ですが、ドラマ好きにとっては好機かも。なぜなら、身もだえのするような面白いドラマが次々に始まったから。これならおうち時間も充実この上なし。ということで、6月末スタートしたばかりの3作品の魅力をご紹介したいと思います。ファンタジーと現実のあわいを描く作品あり、現実に飛び火しそうなヒリヒリ感もあり。3つドラマの作風はそれぞれ個性的ですが、共通点も発見できました。

●『空白を満たしなさい』(NHK総合土曜午後10時)6月25日スタート

「復生」=死から甦った土屋徹生(柄本佑)が主人公。生き返って自宅に戻った男は、自分がなぜ死んだのかわからない。自分は絶対に自殺などしない、だから誰かに殺されたのではと疑いつつ真相に迫っていく……と、シリアスでスリリングな作風でありながら、どこか荒唐無稽でSFの匂い漂う独特なドラマです。

 まず見所は、主人公を演じている柄本さんの「爬虫類のような」表情にある。抑制された感情が効果的で、いわば無表情が不思議な世界を饒舌に物語る面白さに満ちています。妻を演じる鈴木杏さん、上司役の渡辺いっけいさんなど周囲もがっちりと演技上手たちが固めています。その中で何と言っても目立つのが、主人公にまとわりつくストーカーもどき佐伯役・阿部サダヲさん。気持ち悪すぎてもはや「不気味の極北」。つまり、このドラマは役者を見る楽しみに溢れています。

 脚本もいい。原作は芥川賞作家・平野啓一郎氏による東日本大震災直後に発表された同名小説。「もし亡くしたはずの大切な人に会えたら」という着想から生まれた作品で、脚本担当は映画『そこのみにて光輝く』『ボクたちはみんな大人になれなかった』などを手がけた高田亮氏。つかみから謎とスピード感に満ちた演出で、視聴者はドラマ世界へと一気に引き込まれます。

●『オールドルーキー』(TBS系日曜午後9時)6月26日スタート

 注目の中で始まったTBS日曜劇場の社会派ドラマ。日本のドラマとしては珍しい「アスリートのセカンドキャリア」問題をテーマにして視聴者の心をぐいっと掴みました。ピッチ上で輝くサッカー選手たち。しかし、引退に直面した心境や引退後の進路についてはほとんど知られていない。隠れた苦悩や苦闘をドラマで見せるこの作品、エンタメのみならず社会的な意義も大きいようです。

 実際、撮影現場に5人の元Jリーガーも参加し協力。選手・元選手たちからもドラマについて絶賛のコメントが。

 FC東京等でプレーした増嶋竜也氏は「当てはまることが多くて 心が苦しくなる…」、引退したばかりの大久保嘉人氏は「本当にリアルで笑いあり涙ありのドラマ」、東京V等にいた端山豪氏は「プロサッカー選手を辞めるんだって、自分に言い聞かせた時のあの気持ちや記憶がまだ昨日のことのようで胸が痛い。」(「サッカー批評」2022.6.28)。

 演出は『映画 クロサギ』『テセウスの船』などを手がけた石井康晴氏。オリジナルの脚本はベテラン福田靖氏によるだけあって、スポーツと社会との接点を鋭く突いていく。2回目以降もアスリートという存在の「光と影」を存分に描いてほしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン