そして役者は……いわずもがな、スキャンダルの渦中にある綾野剛さんが主人公の新町亮太郎を演じています。ドラマが始まる前には「精神的に疲弊」「激痩せした」などと指摘され、スポンサーが降りる可能性も報じられたり、ガーシー砲の餌食になったかと思いきや。むしろ相乗効果か逆バネか、ドラマの注目度はグンと上がったもようです。

 それだけではない。第一話の綾野さんの吹っ切れた演技に思わず目を奪われた視聴者も多かった。危機的なスキャンダルに直面した綾野さんが、選手生命を絶たれたサッカー選手と、イヤでもダブって見えてくる。その演技は迫真に満ち、再就職ができずに警備員のアルバイトをしたりマネージメント会社社長の前でいきなり土下座したりと、泣きの演技は他人事ではない。実像とダブるハラハラドキドキ感といったら、ない。プライドを思い切り捨て切ったような演技にほれぼれ。これが演技上の計算なら役者として凄い器です。

 まずは滑り出し、視聴者の心を掴んだようですが今後の展開はどうなるでしょう? グイグイとこのまま引っ張っていくことができるのか注目です。他の役者陣も頑張っています。特にマネージメント会社の社長を演じる反町隆史さんの「凄み」に、おおいに期待したいものです。

●『拾われた男Lost Man Found』(NHK BSプレミアム日曜午後10時、ディズニープラス 午後11時配信)6月26日スタート

 現代のわらしべ長者なのか。自動販売機の下に落ちていた一枚の航空券を拾ったところから、売れない役者・松尾諭(仲野太賀)の数奇な運命は転がり始める。コメディタッチでありながら絵空事ではなくて、松尾諭さんの半自伝的エッセイが原作のドラマ。ウソのようなホントのドラマツルギーが魅力的で、予測不可能な展開に釘付けです。

主演映画に自信たっぷりだという仲野太賀

仲野太賀は売れない役者を演じる

 主人公を演じているのは演技派で鳴らす仲野さん。10㎏も増量して役作りに励んだといい、意気込みが感じられる。キャスティングも実に贅沢で草彅剛、風間杜夫、石野真子……特に芸能事務所社長・山村役の薬師丸ひろ子さんの輝きに驚かされました。薬師丸さんの一挙手一投足に惹き付けられてしまう。ドラマ好き視聴者を喜ばせる作品となるに違いない。

 演出はNHK朝ドラ『あまちゃん』の監督・井上剛氏、つかみは松尾諭さんご本人が登場、手書きイラスト等も挿入しながら説明的なセリフを排してポップに展開していく手腕が見事。

 ドラマを支える三要素といえば、「役者」「脚本」「演出」です。この3作品に共通しているのは、ドラマを支える三つの要素がバランス良く揃っていること。それゆえ秀作の匂いが漂う。今後、大きくジャンプしそうなワクワク感、期待も膨らむ。久々の暑い夏もドラマ三昧で乗り切れそうです。

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