全国紙記者はこう語る。
「まだまだローカル政党色が強い維新が全国区になるためには、東京選挙区での議席は喉から手が出るほどほしかった。海老沢が負けたのは、知名度不足が最大の原因。大阪市議である海老沢は東京ではほとんど無名に等しく、集票力はなかった。ソフト路線で女性の無党派層への浸透を狙ったが、それも裏目に出た」
日本大学教授の末冨芳は、比例区で当選した猪瀬直樹が海老沢の胸を触った後のおさわり容認発言が、女性の有権者を遠ざけた、とみる。
猪瀬によるおさわり事件とは、選挙活動開始直前の6月中旬、猪瀬と海老沢が一緒に東京都内で街頭演説をした際、猪瀬が隣にいた海老沢の胸を何度か触った動画がSNS上に流れて炎上したことを指す。それに対し、海老沢は「まったく気にしてません」と擁護した。
「ワーキングマザーのイメージで選挙運動をしていた海老沢さんは、これで対応を誤った。公開セクハラを女性自身が正当化してしまったように見えた。維新が猪瀬氏に党として注意もしなかったことは、維新が男性優位の政党であることを図らずも露呈してしまい、それを女性が敬遠した可能性がある」と末冨は語る。
訊かれたのは名前だけ
『「トランプ信者」潜入一年』という本を書いた私は、その延長線上で日本の選挙も取材したいと思った。もちろん、トランプの時と同様、選挙のボランティアとして働きながら。
政党は、アメリカにおけるポピュリズム的な政治運動であったトランプ現象に似通っている日本維新の会に的を絞った。維新が全国展開の足掛かりとしたい選挙区ということで、東京選挙区の海老沢の選挙事務所に潜り込むことに決めた。
選挙運動の初日、私は新宿駅前での海老沢の第一声を聞いた。出産の無償化と教育の無償化の必要性を訴えていたが、演説の内容以上に私の印象に残ったのは、聴衆よりも維新のスタッフのほうが多かったことだ。
そして翌日からボランティアとして活動することに決めた。
が、どうすればなれるのか。まったく分からない私は、都内にある海老沢事務所を訪ね、ボランティアになりたい旨を告げた。