国内

【維新・選挙ボランティア潜入記 第2弾後編】街頭演説で語られた主要政策の杜撰さ

海老沢由紀(中央)の選挙戦に協力

海老沢由紀氏(中央)の選挙戦から何が見えたか

 ユニクロ、アマゾンなどへの潜入取材で知られるジャーナリスト・横田増生氏が、参院選東京選挙区に出馬した維新候補の選挙ボランティアとして潜入レポートした週刊ポスト2022年7月29日号での記事は大きな反響を呼んだ。内側から見た維新の問題点は、まだまだある。その“ハリボテ”ぶりとは──。(文中敬称略)【前後編の後編。前編から読む】

 * * *
 そうした杜撰な面は、維新の会が主要な政策を策定する過程にも影を落とす。

 選挙期間中、海老沢由紀は街頭演説のマイクを握るたび、日本の少子高齢化を憂慮する数字を挙げるのが常だった。

「去年生まれてきた赤ちゃんの数は81万人だったんです。私が子どもの頃は、200万人を超えていました。それが、だんだん減ってきています。それに対し、年金生活者は4000万人を超えます。このまま少子化が進めば、より少ない若者で、高齢者を支えることとなり、いずれは支えきれなくなります」

 少子化の原因は、日本では教育費がかかりすぎるので、親が安心して子供を産み育てることができないことにある。

「親の収入に関係なく、子供が自分たちの道を切り開いていける社会にしたいんです。そうした政策を実現できるのは日本維新の会だけなんです」と海老沢は力を込める。

 教育の無償化の実践において先頭を走っているのが、維新の会が政権運営をする大阪市と大阪府であり、その実績を踏まえ、教育の無償化を全国に普及させたい、と海老沢は訴える。

 大阪の少子化対策の実績として挙げるのは、大阪市が行なった小中学校の給食の無償化だ。

 日本維新の会の代表であり、大阪市長の松井一郎は東京でこう言って胸を張った。

「2年前から、大阪市では小中学校の給食の無償化をやったんです。増税はしていませんよ。行政の無駄をなくしていくことで、給食費無償化の財源が生まれたんです」

 もう一つは、所得制限付きの私立高校の学費の無償化。最後は、これも所得制限付きの大阪市立大学と大阪府立大学の学費の無償化だ。

 この3点について反論するのは、関西学院大学法学部の教授である冨田宏治だ。

「大阪市の給食の無償化というのは、新型コロナ対策として2020年から時限的に行なわれた緊急措置にすぎません。財源も改革で捻出したわけではなく、財政調整基金というこれまでのたくわえを取り崩したにすぎません。さらに言えば、来年23年度以降、学校給食の無償化が継続されるかどうかは白紙の状態です」

 大阪府が行なう私立高校の無償化についてはどうだろう。

「ポイントは、所得制限という言葉。大阪では世帯収入を590万円以下に区切って、学費の一部を補助しているにすぎません。大阪府の私立高校への援助の順位は、全47都道府県のうち43位にとどまるという民間の数字もあります。それと比べると、私立高校の学費無償化が実現している東京都のほうがよっぽど進んでいます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン