歴史を遡ってみても、1990年にはヤクルトが小池秀郎の外れ1位で岡林洋一、1989年には横浜が野茂英雄の外れ1位で佐々木主浩、1982年には巨人が荒木大輔の外れ1位として斎藤雅樹を獲得した例がある。スポーツ紙デスクが言う。
「第3回ドラフト(1967年)から一時、指名順位抽選制度になったことで外れ1位はなくなったが、江川事件で巨人がボイコットした第14回ドラフト(1978年)から入札制度となり、再び外れ1位が出現するようになった。1993年からは大学・社会人が逆指名となり、2007年に希望枠(逆指名)がなくなるまで、高校生にだけ外れ1位がある仕組みだったが、そうしたなかで、本命の1位候補よりも活躍する外れ1位という例がいくつも生まれてきた」
2010年ドラフトでは1巡目の第1回入札で斎藤佑樹、第2回入札で塩見貴洋の抽選を連続して外し、「外れ外れ1位」でヤクルトが獲得したのが山田哲人だ。2018年ドラフトでは阪神が藤原恭大、辰巳涼介の外れ外れ1位で近本光司を獲得している。山田哲人はトリプルスリーを3回達成し、近本は1年目にセ・リーグ新人最多安打と盗塁王に輝いている。
外れ1位や外れ外れ1位がなぜ活躍するのか。在阪球団も元スカウトの見方はこうだ。
「もちろんスカウトの目が問われる問題につながってくるが、野球も興行。1位で競合するケースは実力より話題性で指名することも少なくない。どの球団もクジが外れた時の候補を2~3人に絞っており、そちらのほうがむしろ、即戦力や潜在能力を秘めた選手が多い。村上がまさにそうだが、そうしたなかで『外れ1位で重複するケース』は、プロ入り後に能力を開花させ、活躍する例が目立つ印象だ」
外れ1位の星とも言える村上は、どこまで数字を伸ばせるか。