スポーツ

【コロナと甲子園】集団感染の県岐商 無症状で陽性判定の選手から監督へのメッセージ

メンバーの大幅入れ替えを余儀なくされながらも、県岐商の選手たちあ最後まで試合を戦い抜いた(共同通信社)

メンバーの大幅入れ替えを余儀なくされながらも、県岐商の選手たちは最後まで試合を戦い抜いた(共同通信社)

 緊迫した投手戦、息をつかせぬ乱打戦──炎天下の甲子園球場(兵庫・西宮市)で、高校球児たちがはつらつとグラウンドを駆ける。だがその裏で、選手たちは相手チームとは別の“見えない敵”との戦いも強いられていた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、コロナ禍の影響を受けた球児たちの夏をレポートする。【全3回の第1回】

 * * *
 新型コロナに翻弄されたこの夏の甲子園を象徴するのが、8月9日に一回戦を迎えた岐阜の伝統校・県立岐阜商業(以下、県岐商)だった。クラスター(集団感染)の発生により、ベンチ入りメンバー18人のうち10人を入れ替えて臨んだ初戦で、夏初出場の社(兵庫)に1対10と大差で敗れた。聖地からの去り際に、鍛治舎巧監督(71才)はこんな言葉を残した。

「1度、いや2度ほど、出場辞退を考え、責任教師と話をしました。エースピッチャーがダメで、キャッチャーもダメで、ショートや、1番2番の外野手もコロナに感染しました。

 チームの守りの要であるセンターラインが完全に崩壊し、これは野球にならないんじゃないか、と。控え選手にも陽性者がいました。“ツギハギ”のポジション変更で、相手の社高校さんに失礼になるのはもちろんのこと、全国のファンにもまともな試合をご覧いただけるのかと……」

 出場辞退が脳裏をよぎるたびに、レギュラーメンバーの中で陰性だった主将の伊藤颯希ら3人の3年生の顔が浮かんだ。

「彼らのために、そして一生懸命部屋で自主トレをして、二回戦以降の試合出場を目指している陽性の選手のためにも、監督であるわたし自ら幕を引くわけにはいかないと思い直しました。恥ずかしい試合となってしまいましたが、こうなったのもわたしの責任です」(鍛治舎監督)

 コロナ元年というべき2年前の夏、県岐商は教員や生徒に陽性者が出たため、岐阜県の独自大会出場を辞退した。同年春に中止となったセンバツ大会に出場を予定していた学校が参加した、甲子園球場での交流試合こそ出場にこぎつけた。しかし、クラスターが起きた直後ということもあり、試合当日に岐阜からバスで甲子園に入り、そのまま日帰りするスケジュールを強行。選手たちは万全の状態でプレーすることができなかった。

 あれから2年、またしてもコロナが県岐商を襲った。49代表校の選手たちがフェスティバルホール(大阪市)に集められた8月3日の組み合わせ抽選会後、宿舎に戻った県岐商ナインが次々と体調不良を訴えた。翌々日の開会式リハーサルは欠席。ベンチ入りメンバーを含む複数選手の陽性が判明した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン