配信ドラマが注目を集めることが増えた(dpa/時事通信フォト)

配信ドラマが注目を集めることが増えた(dpa/時事通信フォト)

 有名監督や人気俳優に力があると勘違いする向きもあるが、それは現場に限定した話。大企業すら一目置かざるを得ない「無名の実力者」というのは日本のどのエンタメにもいる。

「もうこれは戦前戦後の映画産業からの流れで、テレビドラマもまたその映画産業から流れてきた人たちが作って来ましたから、そうした利権は根強く残っています」

 筆者が昨年のルポ『アニメやゲーム業界「日本人は安くて助かります」その由々しき事態』でも言及したが、「何もしていないのに金をかすめ取る組織や連中」というのは本当にいる。ここでは本旨でないため製作委員会やパートナーシップ方式の問題点は控えるが、何であれ「中抜き」は入りこんでくる。

「実のところ、VODには日本のテレビ局や代理店が資本に入っているサービスもあります。そうしたところは旧態依然のままでダメですね。そっくりそのまま、仲良しこよしで業界ゴロが入り込んできますから」

 筆者はアニメやゲームのそうした人や会社しか知らないが、彼の話すドラマや映画の世界はさらに多くの闇がいまだに跋扈しているのだろう。

「昭和の映画全盛期からの残滓なのですが、その流れをくむテレビ業界や芸能事務所もまた、同じような既得権の闇を抱えています。うーん、どこまで話していいのかな」

ドラマ制作も、贈賄事件の東京五輪と同じ

 彼の「どこまで話していいのかな」もまた、よくわかる。筆者もたとえばアニメなら、しゃしゃり出てきて平気で金を持っていく謎の事務所や人物は知っているし、ゲーム業界でも上前をはねる連中はいた。「もっと詳しく書け」と言われても、別に彼らは法的な犯罪に手を染めているわけではないし逮捕もされない。コンサルタント料、アドバイザリー契約といった名目や単純に「協力」という形で入り込む。もしくは一部のパートを小規模な制作会社に下ろして上前をはねる。小物にはなるが男性向けのゲームどころか同人誌にだっている。かつてのいわゆる「ソシャゲバブル」の時代など、3次、4次下請けからイラストレーターに発注がいくケースもあった。もちろん上で請けているのはほとんど必要のない「よくわからない連中」である。

「ドラマ制作の場合はそんな小悪党では済みませんよ。はっきり言って本当に『怖い』連中です。それこそいま絶賛『逮捕祭り』中の東京(2020年)オリンピックの連中とおんなじですよ」

 オリンピックは胡散臭くて、金を抜いたり賄賂をもらったりする連中がいるらしい――噂レベルで聞き及んでいた一般国民も多いだろうが、まさか現実にそうで、ここまでの大疑獄事件に発展するとは思わなかっただろう。それも平均年齢80歳(!)を超える連中によって、である。

 あるいは宗教問題だろうか、あんな冷戦時代の亡霊がいまだに跋扈して、国民生活に影響のあるレベルで国政に関与していたことが暴かれたこともまた同様だろう。まさしく「事実は小説よりも奇なり」だが、日本のコンテンツ業界も同様の闇を抱えている。違うのは、公金や公務員(国会議員も国家公務員であり、オリンピックの理事も「みなし公務員」である)のケースと違いあくまで民事という点である。東日本大震災の除染作業で発覚した5次下請け、6次下請けではないが道義的に問題はあっても商契約の問題でしかない。下請法だ、職業安定法だと法律はあるが、そんなものは「本当に怖い人たち」にとって屁でもない。ただの作文だ。いつもネットでやり玉に上がる某人材派遣会社は堂々と営業、最高益ではないか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト