2013年11月、「クールジャパン機構」(海外需要開拓支援機構)の発足式典であいさつする茂木敏充経済産業相(当時)(時事通信フォト)

2013年11月、「クールジャパン機構」(海外需要開拓支援機構)の発足式典であいさつする茂木敏充経済産業相(当時)(時事通信フォト)

「韓国のドラマ、とくに『イカゲーム』が作品として優れていることは確かです。しかしそれ以上に『必要な場所に必要なお金が使われる』という当たり前の製作姿勢こそがもっとも優れた点であり、学ぶべきことだと思うのです」

 まったくその通りで、もちろん韓国でも中抜きに暗躍する小悪党はいるのだろうが、日本のように現場がギリギリの状態になるほどは抜いてはいない。韓国はエンタメを国策に位置づけているため、韓国コンテンツ振興院(KOCCA院)があらゆる支援はもちろん、良くも悪くも韓国エンタメの製作・制作に目を光らせている。まあ、「それに比べて日本のクールジャパン機構は」などと言いたくはないが、やはり「それに比べて日本のクールジャパン機構は」とは言いたくなる。

「もちろん予算があるからいいものができる、必ず当たる、とは限りません。しかし何でもそうですが『金があってこそ』というのは事実です。アニメもそうでしょうが、ドラマ制作も末端には必要なお金がまわってきません」

 日本のクリエイターのレベルが低いから、と決めつけるのは簡単だが、さすがにドラマやアニメといった大勢のスタッフの共同作業による総合芸術作品で「金がない」はデメリットでしかない。最初から金がないなら、ないなりの作品を作るだろうが、そもそもこの話は「潤沢な予算があるはずなのに金が現場に回ってこない」という話である。

「日本のドラマ現場で言えば、労働問題というか、末端の助監督やADのやりがい搾取問題があるのは事実です。酷いところだと小道具は自腹、交通費も自腹なんて制作会社もあります。信じられないでしょうがこれがドラマ現場の『普通』だった時代もあるのです」

 最近ではマシになったと聞くが、ひと昔前までの助監督、ADの待遇は本当に悲惨なものだった。「好きでやってるんだろ」がまかり通る人権無視の現場は普通にあった。社長そのものが従業員に支払うべき金を抜いている場合もある。これは一部のアニメ制作会社とそっくり同じである。しかし抜かなければ維持できない末端組織の現実もある。

「そりゃ若い子は来ませんよね、でも結局のところ、そうした末端に金が来ないというのも原因なんです。出資側からすれば『ふざけんな』でしょうが」

 出資側は当然、払った分だけの作品を期待する、にも関わらず金が来ないためにチープなものが出来上がる。現場は疲弊して雑なものが出来上がる。昨今の日本の映像作品で心当たりのある作品、みなさんにもあることだろう。

「最近は制作費が集まらなかったり不足したりの場合もVODに出資をお願いすることがあるのですが、それで予算が増えても増えた分が現場に回ってこないこともあります。この国の中抜きは病気なんですよ」

関連キーワード

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン