国内

続発する介護施設での虐待事案と限界まで追い込まれる介護職の厳しい現実

神奈川県立の知的障害者施設「中井やまゆり園」(時事通信フォト)

神奈川県立の知的障害者施設「中井やまゆり園」(時事通信フォト)

 神奈川県立の知的障害者施設「中井やまゆり園」で明らかになった不適切な対応に対する報告書が、県の設置した外部調査委員会により提出された。報告書によれば虐待疑いが25件と明らかにされたほか、その衝撃的な内容に波紋が広がっている。俳人で著作家の日野百草氏が、社会福祉施設に長く勤めた元職員に障害者、利用者サービスにおける現場の厳しい現実について聞いた。

 * * *
「虐待は絶対にいけませんが、虐待が無くならないのが現実です」

 社会福祉施設や福祉関係機関に長く勤めた元職員(60代)に話を伺う。背が高く恰幅のいい方で知識も経験も豊富、筆者も別の福祉関係の取材でお世話になったことがある。現在は体調の問題もあり現役ではないが地域ボランティアでその経験を生かしている。

 社会福祉施設とは老人ホームはもちろん身体および心身(知的)障害者、生活困窮者などあらゆる福祉サービスの施設を指す。あえて大きく書いたのは、彼はそのすべての施設を経験してきたからだ。ある意味、この国の福祉のあらゆる現場を見てきたと言っても過言ではない。

「利用者が弄便(ろうべん)する、血だらけのナプキンを投げつける、職員が後ろから殴られて失神する、これもまた現実です」

 淡々と語る彼の口からは非常に厳しい現実が具体性をもって挙げられる。断っておくが本稿、決して虐待を肯定するわけでも、これらの行為を興味本位に取り上げるわけでもない。また福祉業界の用語はなるべく平易に置き換えているが、一部は説明を加えた上で原文ママとする。ちなみに弄便とは大便で遊んだり、食べたりの行為である。また便宜上、施設における福祉関係者は「職員」、障害者は「利用者」とする。

「体の大きな30代の男性利用者がお尻から便を取り出しては人形のようなものを作って遊びます。80代の男性利用者は軟便を床に漏らすと手でワックスがけのように塗り拡げます。高齢利用者の中には排便機能が低下している方もいますから下剤を使って排便コントロールをしている場合があります。そうなると大量の泥状便や水様便が出ます。意思疎通の難しい状態の方だと撒き散らしたり、床に倒れ込んで泳ぐような仕草をしたりで全身が大便まみれになります」

 泥状便とは泥のような便で、水様便は水のような便、いわゆる下痢便である。

「彼らなりの意味があってしている行動で、自分を綺麗にしようとして別のところに塗りたくるとか、遊んでいるつもりとか、おむつが気に入らないとか、怒られるので便をシーツの中や引き出しの中に隠す場合もあります。彼らにとっては意味のある行動ですから、その行動を肯定する言葉で落ち着かせてシャワーに連れていく、そればかりではありませんが、施設では別に珍しくもない日常です。清掃作業もまた日常です」

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン