芸能

高田文夫氏 ゴダールとジュリー、2つの『勝手にしやがれ』と私には無理な田舎暮らし

2つの『勝手にしやがれ』にどんな思い出?(イラスト/佐野文二郎)

2つの『勝手にしやがれ』にどんな思い出?(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、映画『勝手にしやがれ』を手掛けたジャン・リュック・ゴダール監督の訃報から、『勝手にしやがれ』を歌った沢田研二についてつづる。

 * * *
 先日ジャン=リュック・ゴダール(91歳)の死が報じられた。何故か心に衝撃が走った。中学時代、何となく見た『勝手にしやがれ』(1960年)。これが自由な撮り方で、今までの映画とは違うなと子供ごころに感じていたら、後にあれが「ヌーベルバーグ」だと周りが言い出した。そうか、「新しい波」なのかと早熟な私は理解した。監督ゴダール、主演ジャン=ポール・ベルモンド。強烈なインパクトを私のハートに与えた。

 このコンビは、この後1965年には『気狂いピエロ』を発表し、少年の心を揺さぶり続けた。『勝手にしやがれ』と同じ年に『太陽がいっぱい』(アラン・ドロン)も公開され、フランス人ではない私の周りでもドロン派とベルモンド派に分かれたが、私は断然ベルモンド組だった。ぶさいくとまで言われたあの顔には、えも言われぬ愛嬌があった。

 ゴダールの『勝手にしやがれ』をオマージュして1977年、阿久悠が詞を書き、我らがジュリー、沢田研二が歌い「レコード大賞」までとっちゃったのが『勝手にしやがれ』。“やせ我慢の美学”を追求していった曲だ。

 テレビで歌う時は帽子を投げるパフォーマンスをみせた。この頃からジュリーは演じる歌謡曲のようなものを作りあげていった。1980年にはパラシュートまで背負った『TOKIO』でド肝を抜いた。

 さすがジュリー、私とまったく同じ誕生日、1948年6月25日生まれである。若い頃はよく、双児じゃないかと噂も立った。ベルモンドの『勝手にしやがれ』からジュリーの『勝手にしやがれ』……私は勝手に生きてこうなった。

 そして充分大人になった沢田研二は作家・水上勉になってみせる。映画『土を喰らう十二ヵ月』。水上の随筆をていねいに手間暇かけて映像化。長野の山荘で一人生きる作家。山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自分で料理し、四季を感じながら原稿に時折向かう。ほうれん草の胡麻和え、若竹煮など料理の指導はあの土井善晴だが、実際に作っているのは沢田自身である。

 土を喰らうとは生きることと水上も言う。妻に先立たれた沢田のところへ(勿論これはフィクションなのだが)通って来る編集者がこれまたチャーミングな松たか子。君こそ喰らいたい。

 日本の四季の恵みを感じる一本。『TOKIO』を離れて田舎暮らし。ウーン私には無理そうだ。もうすぐおいしい日本が公開される。

※週刊ポスト2022年10月7・14日号

関連記事

トピックス

11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長。劉氏はポケットに両手を入れたまま(AFP=時事)
《“両手ポケット”に日本が頭を下げる?》中国外務省局長の“優位強調”写真が拡散 プロパガンダの狙いと日本が“情報戦”でダメージを受けないために現場でやるべきだったことを臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン