「大量粛清」が行われた中国共産党新体制

「大量粛清」が行われた中国共産党新体制

冊子を取り上げた

 閉幕式で、今回の大会で新たに選ばれた205人の中央委員ら幹部の名簿が掲載された赤色の表紙の冊子が配られた時のことだ。

 中央委員は約9500万人の共産党員の中で、政府や党、国有企業などの各部門から登用されたエリートたちだ。年1回集められ、中国の重要政策について話し合うほか、政治局員と政治局常務委員を選ぶ権限を持っている。

 つまり、中央委員のメンバーの顔触れが、最高指導部の人事の動向のカギを握るのだ。

 胡の卓上に置かれていた冊子を左隣から手を出して取り上げた人物がいた。序列3位で全国人民代表大会委員長の栗戦書(72)だ。習が1980年代、河北省の地方政府をしていた時からの知り合いで、いわば「側近中の側近」と言える。

 不機嫌そうにしている胡を、栗は必死でなだめようとしたが、言い合いのようになった。

 それを見ていた習が動いた。壇上左手に目配せをすると、男性が駆け寄ってきた。この男性は中央弁公室副主任。中央弁公室は習の身辺警護から日常スケジュールを管理する直轄部門で、そのナンバー2だ。

 習から耳打ちされた副主任は再び舞台裏に戻った。入れ替わるように別の男性が入ってきた。この男性は、開幕式を含め、最近の胡の活動に介添している中央警衛局の職員であることが確認できた。

 栗は取り上げた冊子をその職員にすっと手渡すと、胡に退席するように促した。それでも抵抗する胡を栗が立ち上がらせようとしたところ、その左隣にいた序列5位で中央書記処書記の王滬寧(67)に制止された。そこで冒頭の「胡退場劇」が起こる。胡が退場した後も、栗はハンカチで額の汗を拭っており、緊張感があったやりとりが交わされたことを物語っていた。

 現場の状況について、閣僚経験者を親族に持つ党関係者が次のように解説する。

「新たな中央委員の名簿を見て、胡錦濤氏は事前に習総書記と協議していたメンバーと異なっていることに気づきました。胡氏に近い共青団系の主要な中央委員は落選もしくは引退していたからです。

 これを見た胡氏は、自らの意に反する最高指導部人事になることを察し、異議を唱えようとしたのです」

 胡は、翌23日に選出される新常務委員の人事に強い不満を抱き、公開の場で抗議しようとしたところ、習の側近やスタッフらによって事実上、強制的に退場をさせられたのだ。

後編に続く

【プロフィール】
峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年長野県生まれ。ジャーナリスト。朝日新聞入社、北京・ワシントン特派員を計9年間務める。「LINE個人情報管理問題のスクープ」で2021年度新聞協会賞受賞。中国軍の空母建造計画のスクープで「ボーン・上田記念国際記者賞」(2010年度)受賞。2022年4月に退社後は青山学院大学客員教授、北海道大学公共政策学研究センター上席研究員などに就任、今年10月からキヤノングローバル戦略研究所主任研究員。近著に『ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界』(幻冬舎新書)。

※週刊ポスト2022年11月11日号

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