「卵巣がんの疑い」で摘出手術を受けた『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんは、がんに対する考え方の違いに戸惑ったという。オバ記者が手術後のエピソードを綴る。
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前号(女性セブン2022年12月1日号)でもお伝えした通り、10月に12日間の入院生活を送り、「卵巣がんの疑い」で、12cmに腫れた卵巣の摘出手術をした。
結果は「境界悪性腫瘍」。境界悪性腫瘍というのは、「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(がん)」との中間にあり、「がんではない」という診断。
で、手術後1か月半たったいま、タテに20cmほど切られたお腹は痛みをほとんど感じなくなった。下腹部に5mmくらい残ったかさぶたが取れそうで取れないのは気になるけれど、その程度だ。
腹部の筋肉を切っているので、不自然にポッコリ出たお腹が台所仕事をするときにジャマになって、そのたびにつらかった手術後の数日間をふいに思い出したりする。でも、痛いわけではないから、体のことをそれ以上深く考えたりしない。
「健康」ってこういうことなんだよね。いまもし「健康とは?」と聞かれたら、「体の存在がなくなること」と答えるよ。特に寝起きなどは体の存在がなくて、あるのは意識だけ……って、なんか私、すごく宗教的なことを言ってないか?(笑い)
なんでもそうだけど、どんなことでも自分の身に降りかからないとわからないんだよね。
今回の手術もそうよ。私が「境界悪性だった」と言うと、「じゃあ、手術することなかったんじゃない?」と返してくる人がいるの。この病気になる前の私もそうだったけど、卵巣がんがどんなものか、まったく知らない、てか、興味ない。「卵巣ってどこにあるの? 子宮は生理痛のときに痛くなるところだけど、卵巣はその横か。ってことはこのあたりかな?」と、骨盤を押さえたりする。
その中の1人、K子さんに「全身麻酔で手術をした」と言ったら、顔色を変えて「全身麻酔ってどれだけ危険かわかっている? そもそも摘出なんてする必要があったの? 手術は一択? それって絶対おかしいよ」と言い出したんだわ。「がんになっても治療はするな」という説があるのは私も知っているけど、彼女、そっち派の人だったのよ。
「頑な」という文字が顔に張りついている彼女に、何を言っても仕方がない。ふだんの私なら笑って話題を切り替えるんだけど、このときはついムキになっちゃった。スマホを取り出して、カエルのように膨らんだ手術前のお腹の写真を見せて思わず言い返した。